「うへぇ~……扉がいっぱい……」
「片っ端から砕いていけば、QPが稼げるし、良いんじゃないかしら」
扉を焼いて砕きながら、大量の扉に苦い顔をする茶々。
エウリュアレとしては、仕方ないと思って、近付いてきている扉から打ち抜いていた。
「……素朴な疑問なのだけど、扉を生かしたままこじ開けて、中身を取り尽くすのはダメかしら……?」
「あぁ、それね……ただ中身が散らばるだけで、得が一切ないわ。増えないもの」
過去に一度だけ試し、異常なまでのQPを、一個ずつ手作業で集めた嫌な思い出。
エルキドゥがいたのでその時は助かったのだが、今もう一度同じことをする気はなかった。
「むしろ、私としてはなんで扉が自律して、かつ攻撃してくるのかが分からないわ。扉なら扉らしく大人しく開けられなさいよ」
「そこはほら、宝物を盗られるとか嫌だから、防犯機能でしょ? ……茶々も金庫をそうすれば良いんじゃない? そしたら伯母上に盗まれなくなるはず」
「……何故かしら。その金庫を破壊されて泣いてる茶々の姿が目に浮かぶわ」
「むしろ中身だけ奪われてそうだよね。原因はアビーの門を参考にして作られた移動システムとかで。工作班のノッブとBBなら絶対やると思う」
「そこのエウリュアレとマスター! 縁起でもないこと言わないで! 現実になったら絶対泣くから!!」
既に半泣きの茶々。自分でも想像して、あり得そうだと思ったようだ。
扉の波も一段落し、休憩しつつ話を続ける。
「まぁ、流石のノッブも、二回も茶々の金庫から盗まないでしょ」
「……茶々のプリンは何度も無断で食べられるのに?」
「ノッブは工房に監禁しておくのが一番じゃないかしら」
「……わりと脱出・脱獄が上手いのに?」
「……もう、諦めるしかないのでは」
「逃げたねマスター! でももう茶々は逃がすつもりはないからね! 伯母上対策は任せた!!」
「んな無茶な!」
「ダメよ茶々。カルデアの時を思い出して? ノッブとマスターが一番組み合わせちゃいけないわ。そこにBBも付け加えたら、エルキドゥ以外は誰も手をつけられなくなるのは明らかよ。そういう危険性を考えて言いなさい」
「……じゃあエウリュアレが監視……?」
「良いけれど、代わりにマスターが暴れ始めるわよ?」 「ん? ちょっとエウリュアレ、今聞き捨てならない事を言わなかった?」
「むむ……マスターが暴れるのは困るな……マシュは多分BBに掛かりっきりなるし……」
「待って待って。なんで俺が暴れるのが前提なの?」
「でしょ? ならそこは、エルキドゥでもぶつけておくべきよ」
「むしろエルキドゥがいるなら監視はいらないのでは……?」
どうあがいてもエルキドゥは必要らしかった。
オオガミはそこもだが、それ以上に自分が監視されてないといけないような扱いを受けているのが不満というよりも理解不能らしかった。自分では自覚がないのだから仕方ない。
「むぅ……とりあえず、金庫に警報をつけておいて、次の策を考えないと……」
「そうね。まぁ、頑張りなさい。相談には乗るわ」
そう言って、再び現れ始めた扉を相手に攻撃を始めるのだった。
そもそも、宝物庫システムの金庫を作るのにノッブとBBの技術力が必要という、残酷な現実。アヴィケブ先生に作ってもらうのもあり……?