「……なんで宝物庫を回っているのか。途中から分からなくなる……」
「なんでって……え、足りないからじゃないの?」
唐突に変なことを言い出すオオガミに、困惑するエウリュアレ。
扉の破壊はアビゲイルが元気一杯全力で異界送りにして、宝箱だけ取り上げていた。
「いや……正直スキル上げに使わないならそんな必要ないんだよね……」
「でも、そもそも他にやることないじゃない。それに、貴方の事だから、どうせ突発的に育成したくなったりするんだから、集めておいた方が明らかに得だと思うのだけれど」
「むむぅ……確かにそうだけど、でも、種火も集めておいた方が良いのかなって思ってさ」
「1500個近くあるのに何言ってるのよ……既に十分以上じゃない。これ以上集める必要はないと思うのだけど」
その種火は、既に倉庫に収まるわけもなく、プレゼントボックスの中に入れられたまま放置されているほどだ。
そして、それだけあるにも関わらず、まだ集めようとしているのかと呆れるエウリュアレ。
ちなみに、1500個の金種火は、レベル1をレベル100にしても余るほどの量だったりする。
「むぅ……まぁ、まだQP上限には達してないし、集めておくのはありだとは思うんだけど……なんというか、代わり映えしない光景に涙が……」
「……素材集めに行く? 骨とか、火薬とか、貝殻とか」
「ん~……それはそれで闇を垣間見ることになる……出来るだけ見たくない……」
「……じゃあ、諦めて宝物庫を回るのね」
優柔不断なオオガミに、最終的に安定する宝物庫を勧めるエウリュアレ。
なんだかんだ素材は足りていないのだが、オオガミ的にはメルトリリス用の素材は集まっているので、今すぐ集めようとは思っていなかった。
「まぁ、QPは上限に達するまではかなりあるから、限界まで集めましょう。スキル上げに使ったら一瞬で溶けるんだから」
「スキル上げ……一瞬で溶けるQP……失踪した素材……うっ、頭がっ」
今までのスキル上げの数々が頭の中を巡り、謎の精神ダメージを受けて倒れたオオガミ。
介抱するのは面倒なのでしないが、近付いてくる扉だけはアビゲイルの方へと追いやるように迎撃していた。
「とりあえず、司令塔なんだからさっさと起きて。いつもやってるからって言っても、油断したらダメよ。根本的に一撃が致命傷でしょ」
「あぁ……いや、ちびノブの爆破にも耐えられるなら、ワンチャン行けるんじゃ……?」
「……じゃあ、一回受けて見なさい」
そう言って、エウリュアレはオオガミを盾にするのだった。
QPも素材も足りない……でも、種火だけは足りている謎。