「ここが……これかな?」
「たぶんそうですね。というか、どうしていきなり始めたんです?」
マイルームの片隅で、特にこれといった理由は無く始めた模型作り。
始めてみると、なぜか熱中して途中でやめられなくなってしまい、現在に至る。
マシュはオオガミを探してここに入って来たのだが、その時にオオガミのやっている物に目を引かれ、手伝い始めたのである。
「理由は無いけど、強いて言うならあれだよ。ナーサリーの乗り物の話題で、ノッブとメディアが工作してるからやりたくなったってくらいかな? まぁ、始める理由はんてそんなものだよ」
「そうなんですか……あ、こっちのはこれと組み合わせるんじゃないですか?」
「あ、ほんとだ。っと、それで、なんで俺を探してたんだっけ?」
「あぁ、そうですそうです。ダ・ヴィンチちゃんに言われて、先輩を呼びに来たんでした。なんでも、頼まれてたものが完成したとか」
「おぉ、もう出来たのか。さっすがダ・ヴィンチちゃん」
そう言うと、オオガミは立ち上がり扉へと向かう。
「あれ、先輩、どちらへ?」
「そりゃ、ダ・ヴィンチちゃんの所だよ。頼んでたアレが出来たんでしょ? なら、取りに行ってくるよ」
「えっと、こちらは?」
「置いておいて。じゃ、行ってくるね」
オオガミはそう言うと、部屋を出て行ってしまう。
一人残されたマシュは、上半身だけ出来ている目の前の模型と睨みあう。
すると、数分の間をおいて、誰かが入ってくる。
「む。マシュだけか?」
「あぁ、信長さんですか。どうしたんです?」
「マスターを探しとるんじゃが……どうやらここにもいないようじゃな。まさか休憩室に移動したのか…?」
「あ、いえ、ダ・ヴィンチちゃんの所に、頼んでいたものを取って来ると言って行ってしまいました」
「ふむ、なるほどな。なら、儂もここで待っているのが吉じゃろうな」
「そうですね。あ、椅子も机も無いですが、ご自由に座ってください」
「うむ。まぁ、儂としてはこういうのも悪くはない。つうか、なんで地下なのに月とか見えるんじゃ? そもそも、今は夜ではなかろうに」
窓の外を見ながらノッブが聞く。それに対してマシュは苦笑いをしながら、
「カルデアの不思議の一つです。誰が何時、どうやって変更してるのかは機密情報らしいので。知った人は人知れず消されてるとかなんとか」
「なんじゃその恐ろしい話は。誰が広めとるんじゃ」
「私も聞いた話なので真相は知らないんですけどね」
「ふむ……というか、そこにあるのは、やっても良いのか?」
「えっ? あぁ、これですか。先輩がやっていたんですが……その、途中で取りに行ってしまったので、こんな感じです」
「ふむ……なら、儂がやっても問題ないか」
「なんでそうなるんですか」
当然の如く手を伸ばすノッブの手を叩き落とし、マシュはそう言う。
「いや、ほら。マスターの物は儂の物。儂の物は儂の物、じゃろ?」
「ちょっと何言ってるのか分かりません。とにかく、ダメです」
「えぇ~? そんな非道な事が許されてたまるかぁ! 儂は断固抗議するぞ!」
「どっちが非道ですか。先輩がやり途中なんですから、先輩に許可をもらってからです」
「むぅ……仕方あるまい。諦めるとしよう」
「そうしてください。壊れてしまったら大問題です」
「うむ。そうじゃの。まぁ、儂が壊すとは限らんが」
「まるで他の誰かが壊すとでも言いそうな言葉回しですね……何か企んでます?」
「いや? そんなこと無いぞ?」
不気味な笑いをするノッブに、警戒するマシュ。
そこに現れたのは、
「伯母上! 私にも何か作って!!!」
悪魔の如き、
「何か作ってって……儂に何を作れと?」
「ナーサリーが作ってもらってるようなの! なんかかっこいいし!!」
「いや、まだ完成し取らんのじゃけど」
「だから、茶々の分も作って!」
「中々恐ろしい事を言う……まぁ、材料が余ったら考えるがな」
「やったぁ! って、二人はそこで何してるの?」
ついに気付かれた。マシュがそう思ったときには、すでに手遅れ。
隠す間も無く、普通に掴まれる。
「ほえぇ……叔母上が好きそうなやつだね。マスターの?」
「は、はい。一応置いておくように言われたので、戻しておいてください」
「ふぅん? 分かった。お茶々、怒られたくないし」
茶々はそう言うと、元の場所に戻す。
「それで、叔母上はなんでここにいるの?」
「マスターを待ってるんじゃよ。っと、そろそろ戻るかの」
ノッブがそう言って扉を見ると、予言通りオオガミが荷物を持って入ってくる。
「おぉ、ノッブと茶々もいる。何か用があったの?」
「茶々は叔母上に用があった!」
「儂はお主にじゃな。まぁ、急ぎでないし、そっちからで良いぞ」
「そう? というか、別にパズルを貰ってきただけだし、そっちが優先でも良いよ」
「パズル? こっちの方はどうするんじゃ?」
「とりあえず、こっちが終わって暇があったらって感じかな。それともやりたい?」
「そうじゃのぅ……まぁ、くれるのならやるぞ」
「うん。じゃああげるよ。息抜きも必要だろうし」
そう言うと、オオガミは模型が置いてある所とは違うところにジグソーパズルを置く。
「さて、始めるかな」
その言葉を合図に、マシュはオオガミを。茶々はノッブを手伝いに移動して、作業を始めるのだった。
お題箱にあったガ○プラ破壊をするつもりが、気付いたらちゃんと皆作ってた。破壊が出来なかったよ……!