「……何やってるんですか、こんなところで」
廊下に転がされていたオオガミに、思わず声をかけるアナ。
それに気づいたオオガミは、起き上がりつつ、
「いや……起きたらなんかアビゲイルに部屋を追い出されて、よく分からないままにエウリュアレに締め出された。あまりにも意味不明だった……」
「そうですか……どうせ、何かやったんじゃないですか?」
「いや、だから何もしてないんだってば……」
いくつかの荷物を運んでいる最中だったアナは、話している最中のオオガミを平然と置いて行こうとするが、追い出されたオオガミが素直に置いていかれるわけも無く、一緒について行く。
「それで、本当は何があったんですか?」
「エウリュアレと一緒に本を読んでたのまでは記憶あるんだけどねぇ……寝落ちして、気付いたら隣にアビゲイルがいて、次の瞬間には外に追い出されてた。八つ当たりか何かで追い出されたんじゃないかなぁって……」
「なるほど……一つ気になるのですが、姉様と一緒に本を読むって、一体どういう状況ですか」
「あぁ、うん。それは、突っ込まれると返答に困る奴。最初はベッドを占領されてただけなんだけどね?」
「ふむ……まぁ、姉様が良いなら別に気にしませんが、なんででしょうね? アビゲイルさんが関係してるんでしょうか」
「そう、そこです。つまり、気になるから調べてほしいんだけど」
「嫌です。そう言うのは自分で調べてください」
「えぇ……なんでさぁ……」
「……あまり諜報は得意じゃないんです。特に姉様達に対しては」
「あぁ……まぁ、それなら仕方ないか……でも、エウリュアレが入れてくれるかなぁ……」
「頑張ってください。姉様の機嫌を損ねてるのだとしたら、とりあえず首を狩りますよ?」
「ひぅ……なんか平然と殺害宣言されてるぅ……」
「……避け切るくせに、よく言いますね」
「そこまで人間辞めてないってば。鎖に足を引っかけて転びかけるくらいはするって。重症以上の傷だけは意地でも避けるけど」
「むしろ重症には絶対ならないというその自信がどこから来るのか。というか、見分けついてるんですね」
「そりゃね。だって、どの攻撃を受けても重症だし。普通に全部避けるよね」
「結局全部避けるんじゃないですか」
ジト目で隣のオオガミを見るアナ。
オオガミは苦笑いをしながらアナの荷物の半分近くを取り上げ、一緒に倉庫へと向かう。
「……別に、感謝はしませんよ」
「別にそう言うつもりじゃないし。自分だけ持ってないのは、なんか、ねぇ? 居心地が悪いというかなんというか。だから、別に気にしなくていいよ」
「……それなら、お願いします。場所は言いますから」
「任せといて」
不愛想にそう言って、少し早歩きになるアナ。
オオガミはそんなアナを見て、困ったように笑って追いかけるのだった。
明日か明後日くらいまではこのほのぼのな雰囲気が続く気配……ハンティングクエストが出たらそっちに走るかもしれない……