「エウリュアレ――――は、町に出たんだっけ」
「はい。先輩いじりに飽きたから散策してくると言って先輩のお財布を持って出ていきました」
「はっは~……な~るほどね? 道理でエウリュアレ用の予備財布しか無いと思ったよ」
息抜きに町へ行こうと財布を探したところ、資金のほとんどが入っている方の長財布を持っていかれたことに気付くオオガミ。
財布を持って行かせる時に、自分で取らせないでちゃんと渡せばよかったと後悔するが既に遅い。
オオガミは諦めたように大きくため息を吐き、仕方なくエウリュアレ用の財布を持つと、
「マシュ、行こうか。邪ンヌも行くよー」
「はい。何時でも行けます、先輩!」
「ちょっと待って。カメラの準備があるから」
「あ、そうだった。中のデータを移動させておかないと……」
「先輩……そういうのはもうちょっと早めにやっておきましょうよ……」
呆れたようにため息を吐くマシュ。
そして、改めて準備が終わったオオガミと邪ンヌは、
「よし、レッツゴー」
「はい。写真を撮りまくります!」
「えぇ。使える写真が撮れると良いのだけど」
そう言って、部屋を出て下へ降りる三人。
高いところは普通に登り降りがキツいと百重塔で学んだオオガミだが、エレベーターがある幸せを密かに噛み締めていたりする。
と、エレベーターが動き始めた辺りでふとオオガミが、
「でも、エウリュアレが一人で外に出るって珍しいよね……」
「えぇ。基本的に先輩の近くにいるのに、いませんもんね。レアです。滅多にみられませんよ滅多に見られませんよ」
「どれだけ一緒にいるのよ……」
「別にそんなに一緒にいるつもりはないんだけどね?」
「先輩。それ思ってるの、先輩だけです。そろそろ刺されますよ」
「えっ!? なんで!?」
本気で困惑するオオガミ。
マシュの目が真実だと訴えてくるから尚更だった。
邪ンヌは何か言おうとし、そのタイミングでエレベーターは下まで降りたので言い出せなかった。
「さて。とりあえずビーチかな。でも、山も捨てがたいよね……」
「そうね……ビーチに行って良い被写体がいたら撮って、いなかったら山に行きましょ。まだ時間はあるもの。大丈夫よ」
「はい。じゃあ、行きましょう先輩!」
「おぅ、珍しくマシュがやる気だ。これは頑張らねばならないね」
「はいはい。じゃあ、私は向こうにいくから、あんたたちは向こう側で」
「邪ンヌも一緒じゃなくて良いの?」
「えぇ。気分転換もしたいし、食べ物でも見てこようかなって」
「じゃあ一緒に行こうよ」
「そうですね。ハワイの有名なパンケーキも全然食べてませんし、この際行きましょう。さぁ、早く! 善は急げです!」
「あ~……分かった、分かったわ。行くわよ。あんたも良いわね?」
「問題なし。幸いお金はあるしね。いやぁ、エウリュアレに全額奪われてなくて安心です」
オオガミはそう言って、邪ンヌと一緒にマシュに手を引かれていくのだった。
エウリュアレがいないという事実。でも名前は出たのでノルマ達成ですね(キリッ