「クフフッ……今更ではあるが、ランサーにクラスが変更されたからな。今ならばエウリュアレに止められるはずもない……!!」
「ふぅん? でも、代わりにセイバーには無力よ? バーサーカーの方がまだ有利だったんじゃないかしら」
そう言って、何やら悪だくみをしているバラキーに、いつの間にか背後に這い寄っていたエウリュアレがにやにやと笑いながらバラキーにもたれ掛かる。
バラキーは突如現れたエウリュアレにちょっと泣きそうになりつつ、
「……吾、なんでこう、不幸な目に遭うのだろうか……」
「別に、私は何もしてないでしょ……ただ単に背後から近づいただけじゃない」
「それが問題なのだが……というか、吾、ランサーだぞ? 相性不利であろう?」
「あら、関係ないわ。バラキーはバラキーよ。だって、クラスが変わった程度で私の態度は変わらないわ」
「ぐぬぬ……なんだか負けた気分だ……」
不敵に笑うエウリュアレに、バラキーは苦い顔をする。
「それで、何をしに来たんだエウリュアレ」
「いいえ、別に? ただ、バラキーの姿が見えるから近づいただけよ。良ければ一緒に観光でもしようかなって思っただけで。どうかしら?」
「……まぁ、吾は構わん。だが、資金はどうしたものか……吾、自分の分しかないし」
「大丈夫よ、私の分はあるわ。まぁ、マスターから奪ってきたものだけど」
「……
バラキーの横でオオガミの財布を持って笑うエウリュアレに、バラキーは頬を引きつらせる。
と、そこでふとバラキーは気付く。
「……ふと思ったのだが、召喚されてから一度もエウリュアレとマスターが一緒にいるのを見た覚えが無いのだが……喧嘩でもしてるのか?」
「え? あぁ、いや、そういうのじゃないわ」
「本当か? 喧嘩は良くないぞ……? 喧嘩とか、良いことないからなぁ……」
「……たまに、バラキーが本当に鬼なのか怪しくなるわよね……」
「……吾も、たまにエウリュアレが女神なのか怪しく思う時があるのだが……」
互いに互いの存在を怪しむも、結局あまり深く追及はせず、街道を歩く。
「それで、どこに行くの?」
「うむ。『ろこもこ』なるものを食べてみたくてな! 有名な店に行こうと思う!!」
「ロコモコねぇ……えぇ、分かったわ。じゃあ行きましょうか」
「うむ。食べ物に関してはエウリュアレを信用してるからな! 楽しみにしてるぞ!」
そう言って、自信満々に先導するエウリュアレ。
その後ろを、バラキーは期待で胸をいっぱいにして追うのだった。