「ふっ。私ほどになればこの程度の温度、何てことはない」
「それにしては重装備ですねスカサハ様」
額に冷えピタを張り、保冷剤を全身くまなく張り付けた状態で何故か涼しい顔をしているスカディ。
そんな摩訶不思議の塊のようなスカディに、思わずオオガミが突っ込みたくなるのも自然なことだろう。
「ふん。せっかくの知らぬ島を探索することも出来ないというのは、悔しいからな」
「そ、そういうことですか……」
「あぁ、そうとも。だから、お前もついてこい」
「えっ……マジで言ってるんですかスカサハ様」
「当然だろう? あの氷の皇女と歩くつもりだったが、悲しいことに部屋を出てすぐに倒れてな。仕方無いと置いてきた」
「えぇっ、ちょっと待って。それ、アナスタシアが倒れてるってことじゃ――――」
「安心するといい。私が誰も置かずに出てくるわけないであろう? 茶々に任せてきた」
「うわ、オカンがいない今では対病人最強の茶々を運用するとかマジ最強ですかスカサハ様マジパネェっす」
それ以上に、よく茶々を捕まえられたな。とオオガミが思うのは、普段の横暴っぷりに悩まされているからだろうか。
「それで、来てくれるだろうか」
そう、改めてスカディに聞かれ、オオガミは既に日が沈んだ外に目を向けつつ、
「……どこまで行きます? スカサハ様」
「ふふっ。あぁ、そうだな。町を巡ってみたいのだが、構わないか?」
「えぇ、構いませんよ? お好きなように行きましょう」
そう言って、オオガミはスカディと一緒に町へ出るのだった。
* * *
もちろん、それを影から見ていた人物はいる。
例えば、茶々に振り回されていたメンバーとか。
「はわわわ……な、何してるんですか、マスターは……!」
「あの人、今度はスカディさんにまで振り回されてるんですか……絶対わざとやってますよね」
そして、そんな事を呟くアナと騎士姫の後ろで、不適な笑みを浮かべているエウリュアレは、
「まぁ、私は構わないわ。むしろ、アナスタシアは大丈夫かしら。茶々のことだから問題ないと思うんだけど、ちょっと気になるわ」
「ね、姉様……本当に良いんですか?」
「えぇ、本当に良いのよ? というか、別にマスターが何をしてようと気にしないわよ。むしろ、なんで私が反応すると思ってるの……?」
「えぇっ!? 本気で言ってるんですかこの人!」
「な、何よ……本気も何も、それ以外言えないじゃない……何? そんなに私がマスターの事を気に掛けないのがおかしいの?」
一人、怪訝そうな顔をするエウリュアレに、二人は顔を見合わせるのだった。
スカディさんの装備を想像すると、シュール過ぎて……誰がこんなことをしたんだ……