「先輩……どこに行ってしまったんでしょうか……」
きょろきょろと周囲を見渡しながら、街を歩くマシュ。
その隣にいるのは、騎士姫。たまたま出会ったので、困っているマシュの手伝いをしようと思ったようだった。
「まぁ、マスターは神出鬼没と言いますか、探すならエウリュアレさんを探した方が早いと言いますか……」
「そうなんですけど……そのエウリュアレさんもいないので、困っているというかなんというか……でもまぁ、別にいいんですけどね。ポイントが足りてないから気になっていただけですし。えっと、リリィさんは何かしたいことありますか?」
既にオオガミを探すのを止めて遊ぼうとしているマシュ。
騎士姫は困惑しつつ、
「えぇっ。マスター探しはいいんですか?」
「はい。街中にいないって事は、たぶんエウリュアレさんに連れられてポイントを集めに行ってるんだと思います。なので、遊んでしまおうかと」
「なるほど……じゃあ、あれです! ダイビングをしてみたいです!!」
「じゃあ、行きましょうか。この前はサメが出ると言われていたので警戒していたんですが、アンリさんと新シンさんが撃退したと聞いたので、遠慮なく遊べますね」
「はい! でも、一応最低限の武装はしますね。まだいないとも限りませんし」
「そうですね。私も盾はしっかり持っているようにします」
最低限の武装だけは持って、浜辺へ向かう二人だった。
* * *
「……茶々、暴れすぎたからもしかするとここに閉じ込められてるんじゃ……?」
「それだと、私も閉じ込められていることになるのだけど」
ホテルの部屋から街を見下ろす茶々は、遠い目をしているが、呟いた言葉にアナスタシアが文句を言う。
「まぁ、アナスタシアが元気になったなら良いんだけどね。それで、もう大丈夫なの?」
「えぇ、すっかり良くなったわ。でも、外は暑くてどうしようもないわ。スカサハさんは大量の保冷剤を持って行っていたけど、正直重そうだし、更に言えばその方が熱そうだから真似できないわ……」
「ん~……それは茶々じゃどうしようもないなぁ……」
ため息を吐いて、茶々は部屋の外へと向かう。
「最近、マスターが料理をしようとしてるし、茶々もなんか作れるようになりたいからね。アナスタシアには実験台になってもらおうかと」
「わ、私は普通の料理を食べたいのだけど……」
「流石に赤マントに教えてもらうつもりだから美味しくないのは出来ないと思うんだけど……」
「帰ってからでもいいじゃない」
「むむっ……それを言われると、確かに……是非も無し。わざわざ旅先で練習する必要は無いよね! じゃあ今日はキャットにハワイ料理を出してもらおう!」
「……本当に、切り替えが早いわ……」
アナスタシアは呟き、茶々を追うのだった。
タイトルをほんの数行で裏切っていくスタイル。もはやいつもの光景ではある……