「とまぁ、散々時間かけたわけじゃが、出来たんじゃよ」
「ふむ。で、その本題である乗り物は?」
「うむ。ナーサリーがカルデア内を乗り回しておる。止めようとしたら恐ろしい速度で逃げられた」
「やってくれたなノッブめ!!」
マイルームにドヤ顔でノッブが入って来たかと思えば、逃げられたという報告だった。
一緒に入ってきたメディアが申し訳なさそうな顔をしていた辺りで嫌な予感はしていたのだが、まさかの事態にオオガミは頬を引きつらせる。
「それで、エルキドゥには?」
「伝えられるかこんなもん。努力の結晶が木っ端微塵間違いなしじゃぞ」
「だよね。うん、そんな気はしてた。それで、形状は?」
エルキドゥに頼るのは止めた方が良いと判断したオオガミは、すぐさま対策を練るために情報を聞き出そうとする。
「あ~……あれじゃ。アリスに出てくる時計ウサギ。ナーサリーの要望でその形にしたんじゃが、まさか乗り込むと同時に走って逃げだすとは……もう、何というか、完全に服を着たウサギが爆走し取る感じじゃった。正直あそこまできれいに走れるとか思わなかったんじゃけど……」
「…………何それすごい見て見たいんだけど。え、普通にすごくない?」
「頑張ったわよ。えぇ、頑張りましたとも。でも、逃げられるとか思わないじゃない。全力疾走だったわよ。乗り回してるナーサリーの表情が輝いていたからそんなに悪く思っては無いんですけどね!」
「おいメディア。お主そんなんでいいのか?」
「あ~……うん。まぁ、新しいおもちゃを手に入れた子供状態なわけだ。ん~……どうするかなぁ…」
考えつつ、とりあえずカルデア内を見て回ろうとして、マイルームから出ると、
「先輩! カルデア内に巨大ウサギがいるという通報が来てます!」
「だよね! 普通そうなるよね!」
「マスターの部屋に来てから騒ぎ始めたんじゃが。フラグってやつか?」
「エルキドゥにばれてないでしょうね……」
「げっ。それは流石に不味い……早く行くぞマスター!!」
「信長さんにメディアさん…!? ってことは、アレは例の乗り物なんですか?」
「らしいよ。とりあえず、今はそのウサギを探しに向かう。行くよマシュ!」
「は、はい!!」
オオガミに続いて、三人とも走り出す。
* * *
「くぅ……何なのよアレ……いきなり出てきたと思えば、服の端で顔を狙ってくるとか、中々やるじゃないの……」
「ぐぬぬ……余としては不満しかないのだが。というか、誰か乗っていたような気がするのだが……」
廊下の両端に倒れているエリザベートとネロ。どちらも何かにぶつかったような事を呟いていることから、おそらくナーサリーと接触したとだと思われた。
「エリちゃん。ネロ。大丈夫?」
「マスター? もちろん、私は大丈夫よ。ただ、なんかとても気になるのを見た気がするんだけど……」
「余も問題ない。マスター、アレは何なのだ? あんなのがカルデアにいるとは聞いてないぞ? 動物はフォウとアヴェンジャーだけではなかったのか」
「ノッブとメディアが作った乗り物だよ。ナーサリーが乗ってて、暴走中なんだってさ」
「なんだそれは。気になるからついて行くからな!」
「私もついて行くわ。次は負けないんだから!」
「エリザベートとネロが仲間になった。と言ったところか? マスター」
「こら。茶化さない」
「そうですよ信長さん。メディアさんの言う通りです。遊んでる場合じゃないんですから」
「妙に辛辣なんじゃが。まぁ、儂の落ち度なんじゃけど」
納得がいかなそうな表情をするノッブ。元凶なのだから仕方ないのだった。
「それで、余とエリザは何をすれば良いのだ?」
「そうだね……とりあえず、エルキドゥにばれないように見張っててくれない? 見つかると破壊されかねないから」
「ふむ。それは困るわね……任せなさい! ちゃんとやり通して見せるわ!」
「任せよ! 余に誓って、エルキドゥを足止めしてみせよう!」
「任せたよ!」
そう言うと、エルキドゥを探して二人は行ってしまう。
「あの、土方さんもこの場合危険なのでは……?」
「…………それは考えてなかった」
想定外の突っ込みに、硬直するオオガミ。しかし、すぐに気を取り直すと、
「い、いや、まぁ、何とかなるでしょ。土方さんはエドモンとチェスか将棋やってるよ…!」
「待て。しかして希望せよ。じゃな」
「ノッブがそれを言うと不安になるんだけど……」
「先輩。とりあえず、ここで止まってる場合じゃないです。急いで見つけないとどの道いろんな意味で危険ですよ…!!」
「それもそうだ。急がないとだ!」
そう言うと、再び全員は走り出すのだった。
これは、後にウサギ爆走事件として伝えられていく話。(予定)
唐突な続き物。
という事で、明日に持ち越すレベルの事件です。出来るだけ多くのサーヴァントを出すんだ…!!!