「ふぅ……しかし、私はここに来てから休んでいる日がほとんどない気がするのだが……」
「お疲れ様。これでも食べて、休んでください」
「……まぁ、良いか。うむ、ありがたく受け取ろう」
ひたすら周回させられていたスカディは、ふと疑問を口にするが、オオガミにアイスを貰い、気分が良くなったので気にしないことにした。
それを見ていたアナは、
「女神への扱いが雑だと思うんですが」
「マスターへの扱いがぶっちぎりで雑な人が何をおっしゃいますか」
即座に言い返すオオガミ。
とはいえ、自覚はあるのでそれ以上は言わない。アイス一つで女神を懐柔しようとしているのだから。
「アナも食べる?」
「……モナカのやつが良いです」
「はいはい。じゃ、これで良い?」
「よくありましたね……」
「遊びに行った二人の分以外は買ってきたからね。アンリとマシュはどうする?」
振り返り、遠くにいるマシュとアンリにも声をかけるオオガミ。
アナは貰ったアイスを食べつつ、遊びに出掛けたエウリュアレとアビゲイルを思う。
「姉様……大丈夫でしょうか……最近はマスターといるから安心していたのですが、アビゲイルさんと一緒ですし……やっぱり私もついて行った方が良かったんじゃ……」
アナの表情がだんだん険しくなっていく。
エウリュアレと離れているのは、エウリュアレにオオガミの近くにいろと言われたのが主な原因だった。
そんなときだった。アナは頭を乱雑に撫でられる。
困惑して顔を上げると、そこにはオオガミがいた。
「……何をするんですか。刈り取りますよ?」
「いや、なんか険しい顔してるなぁって。頬を膨らませるのはまだ良いと思うけど、睨み付けるような目はどうかなって思うんだよ。それと、言いたいことは素直に言って良いんだよ?」
「……髪がボサボサになってしまいました。直してください。これじゃあ姉様に顔向けできませんから」
「任せといて。ちゃんと整えるから」
そう言って、どこから取り出したのか、櫛を手に持って座れる場所まで移動する。
アナは大人しくついていき、オオガミの正面に背を向けた状態で座るのだった。
* * *
「先輩、私にはやってくれたこと無いんですよ」
「そりゃお前、単純だろ。そもそも一緒にいないじゃん。今から行って、やってもらえば良いだろうが」
「流石にそれは……う~ん……」
不満そうに唇を尖らせつつカップアイスを食べるマシュと、釘を打つこともできると話題の鋼鉄あずきアイスと格闘するアンリ。
ちなみに、エウリュアレとアビゲイルは、本当に遊びに出掛けている。もちろん、財布はオオガミが渡した分の金額しか入っていない。
「まぁ、うちのマスターは言わないやつは基本放置の方向だから、やってほしいなら言いに行くこった。しっかし、このアイス……食えねぇなぁ……」
「うぐぐ……やっぱり言わないとダメですか……でも……うぅん……」
煮え切らないマシュを横目に、アイスを相手に苦戦しているアンリなのだった。
のんびりとやっているので全然終わらない……
エウリュアレがいないのって、意外と珍しいような……