「……終わんのか?」
「……順調にいけば、たぶん」
苦い顔をしつつ、アンリの疑問に答えるオオガミ。
今は休憩中だが、APが回復したらまた周回再開するつもりだった。
「つか、リンゴ使えば早く終わるんだろ? さっさと使っちまえよ」
「いや、そこまで急いでる訳じゃないから良いんだけどさ。ただ、そもそもどれだけあるのか知らないから、急いだ方がいいのかも分からないのが、困ったところ」
「ふぅん……ま、良いんなら問題ねぇか。ところでさ……マシュに黙ってガチャ引きまくってるが、良いのか? バレたら殺されんじゃねぇの?」
「……まぁ、バレなきゃ安全なんで……最悪、全力で逃げるつもり」
「なるほどな。だってさ、マシュ」
「えっ」
直後、背後から抱き締められるオオガミ。
正面でアンリがニヤニヤと笑い、止める間もなく逃げ出した。
背後にいるのは、先程の流れからも、背中に当たる感触からも容易に想像できた。
「先輩……私、使わないでくださいって、あれだけ言ったじゃないですか……」
「……ぐうの音も出ないです……」
「また、勝手に使ったんですね?」
「……イスカンダルが来たのなら、引かざるを得ないかなって。是非もない事象というものですよ」
「じゃあ、今から私が先輩に八つ当たりをするのも、是非もない事象ですね」
「いや、それは――――」
直後、オオガミの悲鳴が響き渡るのだった。
* * *
「……今、マスターがとんでもない目に遭っている気がしたのだけど」
そう呟くエウリュアレに、店員からクレープを受け取っていたアビゲイルとアナが振り返る。
「姉様……突然どうしたんですか?」
「マスターがとんでもない目に遭ってるって……一体どんなこと? 正直に言って、マスターはそう簡単にやられないと思うのだけど。だって、マスターよ?」
「……なんとなく、貴女達がマスターの事をどう思ってるかが分かるのだけど……でも、マシュ相手には結構甘いから、たぶん今頃黙って呼符と石を使ったのがバレて怒られてるんじゃないかしら……」
大体現在のオオガミの状況と合っていた。
だが、アビゲイルは流石に信じられず、
「まさか、マスターが負けるわけないじゃない。どうせすぐ逃げるわ」
「どうかしらね。今のところ、マシュが本気で追いかけて捕まらない方が珍しいのだけど」
「えぇ……じゃあ、なんで私達じゃ捕まらないのかしら……」
「……姉様が探すと、すぐに見つかりますけどね……」
「……エウリュアレさんを越えられる気がしないのだけど」
「失礼な……私もそこまでじゃないわよ」
そう言って、なんとなくオオガミがピンチなような気がしつつも、それを無視して食べ歩きを続行するエウリュアレ達なのだった。
ひっそりとマシュは対オオガミ特攻。