「……何故、こんな状況になったものか。肩車とか、要求されるとは思わなかったよ」
「……高さが違うのよね。でも、まぁ、これはこれでいいわ」
そういうエウリュアレは、オオガミに肩車をされていた。
オオガミとしては別段構わないのだが、少し離れたところを歩いているアナの視線がまるで絶対零度のごとき冷たさだった。
「そういえば、アビーは?」
「今はスカディのところで話してるわよ。まぁ、楽しんでいるなら良いんじゃないかしら」
「スカサハ様のところ……ねぇ……まぁ、何の話をしてるかは知らないけど、気にすることでもないか」
「そうですね。姉様を放り出してまで気にする必要はないかと。えぇ、はい」
「……アナが若干怖いのですが、お姉さんから言ってやってください」
アナが若干暴走気味なので、姉であるエウリュアレに叱ってもらおうと思い、投げ掛けたが、エウリュアレはなんでもないような表情で、
「私は別に良いのだけど。メドゥーサが暴走しても、マスターの責任じゃない?」
「うぐぐ……反論出来ない……」
サーヴァントの暴走はマスターの責任。その言葉に、なんとなくペットを飼っているような、そんな気分になってしまうのだが、この暴走具合はどちらかというと、子供の世話をしているような感覚だった。
「そういえば、アンリの姿を見てない気がする……」
「アンリなら、さっき買い物に行って来るって言ってたわよ」
「買い物……? あぁ、いや、うん。まぁ、長期戦になるだろうしね。飲み物を買ってきたりするのも必要だよね……うんうん」
「……ちょっと様子を見に行ってきますね。流石に彼一人だと、帰ってこれない可能性がありますし」
「うん、お願い。実際、アンリだけだと不安だしね」
「はい。じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい。しばらくはここから動かない予定だよ」
それを聞くと、アンリを探しに行くアナ。
それを見送ったオオガミとエウリュアレは、
「一昨日くらいに美味しそうな店を見かけたのだけれど、行ってみない?」
「ん~……そうだね、後で行ってみようか。とりあえず、全員揃ったらかな」
オオガミがそう答えると、なんとも言えない表情になるエウリュアレ。
「……はぁ。まぁ、それでいいわ。まずは向こうにいるマシュ達を誘いましょうか。三人とも揃ってるし、ちょうどいいでしょ。後はアンリとメドゥーサを待つくらいかしら」
「そうだね。まぁ、アナのことだからそんなに時間はかからないと思うし、大丈夫だよね」
「えぇ、そうね。ほら、早く行きましょ」
そう言って、二人はマシュ達の方へと向かうのだった。
ずっと肩車をしていることを考えると、かなり不審者な気がしないでもない。いや、いつも通りですね……