「マスターがまた部屋に閉じこもりそうなんじゃけど」
「メルトリリスさん……来てくださいませんからね……」
「あの……そんなに深刻なんですか……?」
苦い顔をしているマシュとノッブを前に、いまいち状況を理解できていないリップが聞く。
共に座っているエウリュアレは、ほとんど興味が無さそうだったが、聞いてはいるようだ。
「あぁ、それはもう恐ろしいぞ。なんせ、種火にすら行こうとせんからな……」
「ほ、本当に動かなくなるんですね……」
「えぇ、異常なまでに動きません。まぁ、時間が経ったら出て来てくれるんですが、それまでは待ち続けるしかないですね……」
「大変ねぇ……私は待つのは嫌いじゃないから分からないけど」
「お主は楽そうでいいのぅ……まぁ、儂ももうレベル的に十分じゃし、スキルはQPと素材が足りないから待機するしかないしな」
「ん~……私も待つしかないんですね」
「儂が行っても微動だにしなかったからの……つか、倉庫の種火、どうするつもりなんじゃろ」
「誰かのレベルを上げるとは思うんですけど……誰なのかまでは流石に」
倉庫に満杯に入っている種火。メルトリリスが当たった時のために、と言ってコツコツ溜めていたのだが、出そうにないので倉庫の肥やしになっていた。
「まぁ、明日もありますから、可能性はありますよ!」
「そうじゃなぁ……沖田の時も同じことを言ってたんじゃよなぁ……」
「見事に一日部屋から出てきませんでしたよね」
「あの時は奇跡的にエイプリルフールだったからのぅ……嘘アプリに救われたんじゃよ」
「明後日からミニイベントがあるじゃない。それで起きてくるかもしれないわよ?」
「あ、あはは……そんな簡単に出てくるんだったら皆そんなに悩まないんじゃ……」
エウリュアレの言葉に対し、リップがそう言ってマシュとノッブの方を見ると、
「ん~……ありえなくもないんじゃよなぁ……」
「むしろ普通に起きてきそうですよね……」
「えぇ~……引きこもらないのは良いんですけど、そんな緩い感じでいいんですか……?」
「そのくらいの気概じゃなきゃソシャゲなんぞ出来るか!! 運が無かった! 縁が無かった! なら仕方なし! そんな心意気でなければ、生き残れんぞ……財布的に!!」
「最終的にそこに持って行くところがさすがだと思うわ」
「最後には金銭面の話になるんですね……」
「フッ。そう褒めずともよい。儂は思った事を言ったまでよ」
「一瞬も褒めてないわよ」
「バッサリ斬りおったな…!?」
迫真の表情で言い切ったノッブに適当な返事をしつつ、今日のお菓子であるカステラを口に運ぶエウリュアレ。
マシュとリップはそれを見ているが、入り込む余地は無さそうだった。
「それで、私たちに打てる手は無いんでしょう? どうするのよ」
「そりゃ、マスターが自力で復帰するのを待つしかないじゃろ」
「そうですね。しばらくは様子を見ているしかありませんから」
「何もできないっていうのは心苦しいですけど、本当にどうしようも出来ないみたいですし、私も見守りますね」
そして、四人は今度は別の話題へと移るのだった。
はい。今現在、メルトリリスは出ていません。絶望です。
これはもう、死んでしまうかもしれない……