「今更なのだけど、本人に聞くのは考えなかったの?」
「考えたけど、買ってくると言ったのに一緒に行こうっていうのは些かどうなのかと思ってさ……」
「そんな気にする必要は無いと思うのだけど……」
エウリュアレの疑問に少し困ったような表情で答えるオオガミに、ため息を吐くエウリュアレ。
とはいえ、スカディはそこはかとなく絡み辛い雰囲気があるのは確かなので、次の時には誘ってあげようかと思うエウリュアレだった。
「あ、もしかして、あのお店でしょうか」
そう言うマシュの指差した先にあるのは、確かにオオガミの目的地だった。
「さて、スカディ様の服……どうするかなぁ……」
「紫だからねぇ……あ、でも、ドレスでもいいかもね。カラーは……黄色か、黄緑色のものかしらね」
「流石に売ってるとは思えないけど……まぁ、売ってなかったら、メディア大先生にご教授願って作ろうか……」
「……本当に、どこに向かってるのよ。出来る事が増えてない……?」
どんどん出来る事が増えていっているオオガミに、そのうち屋内の生産系は色々出来るようになっている気がしてきた。
「そんなに出来ないって。そんな才色兼備の最強的存在じゃないし。まぁ、料理のバリエーションは増えたけど」
「……なんで増えているのかしら。というか、お菓子作りじゃなくて料理なのね……えっ、普通に作れるの?」
「……あれ、作ったことなかったっけ……」
そんな事を話している二人を、後ろから見ていたアビゲイルは、
「ねぇねぇマシュさん。どうしてあの二人はお洋服を見に行くのにお料理の話をしているのかしら……」
「あの二人、たまに目的を忘れるんですよね……まぁ、放っておいても大丈夫だと思います。はい。むしろ放っておいた方が安全です。飛び火してくると面倒なので」
「な、なんだか手馴れているわね、マシュさん……」
もはや危険物扱いな二人。
ただ、何もしていなくとも突然飛んでくる場合があるので、その時のために受け流しスキルは必須だと語るマシュ。
アビゲイルはその評価に困惑するが、手慣れているマシュの言っている事なので、とりあえず聞いておく。
「それで、マシュさんはどういうのが良いと思うの?」
「私ですか? そうですね……ズボン系ですかね。でも、上着はどうしましょうか……」
「そもそも、あまりお洋服とか見ないのに決めようっていうのが無理な気がするの。メンバーがかなりダメだと思うのだけど。他の方……いなかったのかしら……」
「まぁ、エミヤさんか、キャットさんを連れてくるべきでしたよね……あ、茶々さんでもいいですか。少なくとも、そこら辺の人は連れてくるべきでした。まぁ、させなかったのは私なんですが……」
そういって果たしてどうしたものかと、店を前にして考え始める二人。
そして、四人は店の中へと入って行くのだった。
冷静に考えると、島に引きこもっていた女神と、南極に強制的に閉じ込められていた少女と、片田舎に軟禁されていた幼女しかいないのなら、着る服を考えてもらう相手としては割と選択ミスなんじゃ?