「天誅!!」
「ぬおわっ!? なんじゃあいきなり!!」
突然出現したアビゲイルによる飛び蹴り。
寸でのところで回避した以蔵は、即座に刀を抜いてアビゲイルに向ける。
「ふ、ふふふ……エキシビションで散々やられた仕返しを今ここで……!!」
「そ、それはおかしいじゃろ!! おまんはわしに勝ったじゃか!! むしろわしが仕返す方ぜよ!!」
「やられた北斎さんの為にも、やっぱり私がやるべきよね!!」
「り、理不尽じゃあぁぁぁぁぁ!!!!」
四方八方から襲い掛かる触手に向かって斬って避けてを繰り返す以蔵。
すると、アビゲイルの真下から白い手が現れ、拘束する。
アビゲイルは突然の事に驚いてもがくが、一向にほどける気はしなかった。
そして、それをやった本人が前に立った時、頬を引きつらせた。
「あまり悪戯が過ぎると……食べてしまいますよ?」
「……あの、お店の準備に戻っても良いです……?」
「そうですねぇ……まずは、マスターに聞いてからですかねぇ……?」
「ひぅ……逃げられないし……詰んだわ……」
門を作ったところで逃げられないので、完全に打つ手が無くなったアビゲイル。
触手で攻撃したところで即座に止められてしまうので、目の前で不穏な笑みを浮かべているキアラを倒す事も出来なかった。
そこへやって来たオオガミは、以蔵が倒れているのと、アビゲイルがキアラに拘束されているこの惨状に頬を引きつらせると、
「主犯がアビーなのは察したんだけど、何時の間にキアラさんはこっちに?」
「あら、マスター。何時と言われましても、最初からいたとしか……まぁ、見て回っていただけなので、別に何もしておりませんよ」
「……ちなみに、アビーの店は?」
「まだ、開店していないという事しか。そちらに関しては、さきほどアナさんに連れ去られたアンリさんの方が詳しいのでは?」
「……いや、起きてエウリュアレがいないからおかしいなって思ったんだよ。絶対アナと一緒に何かしてるでしょ……まぁ、良いか。で、アビーは何をしてたの?」
そう言って話を振られたアビゲイルは、視線を逸らしつつ、
「べ、別に何もしてないわ。えぇ、特に何もしてないわ」
「……キアラさん。アビーは何をしていたの?」
「経緯は見ていませんが、とりあえずそこの侍を袋叩きにしていたようにしか見えませんでしたね」
「なるほど……じゃあ、一応離して大丈夫ですよ。後はこっちで何とかします」
「そうですか。では、お願いしますね。私はそちらの方を医務室へ連れて行きますね」
そう言って、アビゲイルの拘束を解いてから以蔵を担いでいくキアラ。
若干の不安を覚えるも、まぁ大丈夫だろうと自己暗示をするオオガミは、アビゲイルを捕まえて、
「とりあえず、何をしたかは置いておくとして、まずはエウリュアレを見つけるのを手伝ってもらうよ」
「……はい。分かりました」
捕まったアビゲイルは、大人しくオオガミの手伝いをするのだった。
天誅っ!! でも、昨日のスパルタの方がヤバかった……