「よっすマスター。今さら帰ってきたぜ」
「本当に今さらだね……何かあった?」
たこ焼き片手に近付いてくるアンリに、オオガミは苦笑いしながら聞く。
すると、アンリは不思議そうに首をかしげ、
「いや、何かも何も、今日はアンタの誕生日だろ? せっかく祝ってやろうと思って帰ってきたのによ」
「うわぉ。アンリがそんなことを考えてくれているとは思わなかったよ」
「まぁ、普段から生け贄担当してやってるし、今日は身代わりになってやった分をまとめて受けやがれとも思ったんだが、流石に自重するわ。なんせそんなことをしたらぶっ殺されそうなんでな」
そういうアンリの視線の先には、にっこりと微笑むBBの姿があった。
そして、アンリはBBと目があった瞬間に、
「よし、じゃあ俺はこれで帰るわ。あぁ、あと、アビゲイルが別料理出してるが、普通に旨いから後で行って見ろよな~!」
「えっ、あ、うん……なんであんな急いで逃げたんだろ……」
そう言ったところで、背後から這いよるBB。一瞬のうちに距離を詰めたので、反応することすら許さない。
オオガミはそれに気付くと、特に驚く様子もなく、
「それで、BBは何の用事?」
「センパイ、本当に驚きませんよね。これだけの事をして無反応だと、BBちゃん泣いちゃいますよ?」
「いや、BBは一回で終わらないじゃん……一回一回驚いてたら体が持たないって」
「ぶーぶー。それでも驚いてくれるのがセンパイでしょう? もうちょっと頑張ってくださいよ~」
「そうは言われてもねぇ……で、何かあったの?」
「えぇ、はい。センパイの誕生日が」
そう言うと、BBは一歩、二歩と距離を取り、にやにやとしながら、どこから取り出したのかオオガミより高い何かを取り出す。
布がかけられているため、中身は見えない。
「それでですね? 今日急いで作業を進めたんです。で、完成しました! えぇ、頑張りましたので、後で何か奢ってください! ノッブ無しで苦労したので!」
そう言って布を取り払ったと同時に露になるソレ。
ソレは、一つの巨大な機械。見せられても全くわからないであろうそれは、しかしBBとオオガミだけは分かっていた。
「えっ、本当に出来たの!?」
「えぇ、もちろん! BBちゃんは最強のAIですので! これ一つでサーヴァント維持分の電力は賄いますとも! まぁ、ダ・ヴィンチにバレないかは少し不安ですけど。とにかく、これでノッブを再召喚すればこの機械も補強できますし、部屋数もこっそり増やせます! これでもう私は地獄を見る必要はないんですね!」
「よし! じゃあ、それを稼働させるのはギル祭が終わってからだね! お疲れ様BB! 何か奢るね!」
「さすがセンパイ! 話が分かりますね! じゃあ散策しましょう!」
「おー!」
そう言って二人が手を振り上げた直後、ぬるりと這いよられる感覚を覚えるオオガミ。
思わず硬直するが、すぐにそれがエウリュアレによるものだと気付くと、
「えぇ~っと……エウリュアレは何をしに来たの?」
「見ての通りなのだけど……えぇ、そうね。せっかくの誕生日だもの。祝って上げようかと思って来たわ。場所はアビーのお店で良いかしら?」
「……BBは?」
「あら、拒否権はないし、二人で行かせると思わないことね。ほら、早く行くわよ」
そう言ってオオガミを引っ張っていこうとするエウリュアレを止めようとBBが手を伸ばした瞬間、間に入り込むアナ。
「姉様が珍しく機嫌が悪いので、今日は諦めてください。明日は良いので」
「うぐぐ……えぇ、はい。良いですけど? 別に、完全に独占されたわけじゃないですし! えぇ、行きますよ! 早く案内してください!」
そう言って、機械を収納しつつアナについていくBBなのだった。
はい。誕生日です。ふふふ……このためにBBを意地でも召喚したんだ……これで縛りから解放されるはず……!
そしてさりげなく久しぶりのアンリ。いつぶりだろう……
あ。ミドキャス当たりました(ドヤッ