「チィッ……中々強いじゃないか」
「みなさん、私をいじめるんですけど!」
「なんかすごい狙われてるよね! リップ! タゲ集中がついてるの!?」
「ついてないですぅ!! むしろ気配遮断がついてますからね!!?」
異様に狙われるパッションリップ。船長も狙われてはいるが、パッションリップよりも軽傷である。
「あなたも、あなたも、あなたも! 私をどうしていじめるんですか!」
「もう、何かの呪いにしか見えないんだけど」
「私もそう見えるよ、マスター」
「もう! どうしてそんなに狙うんですか!! 私以外の人を狙ってもいいでしょう!?」
しかし、当然のごとく返事は返ってこない。
代わりとばかりに返ってくる風や爪や魔力弾がパッションリップに襲い掛かる。
「だから、やめてください!!」
それを、巨大な両手で叩き潰すパッションリップ。
ダメージカットはそういう強引なものなのかと突っ込みたいが、とにかくご立腹のようなので、触らぬ神に祟りなしの精神で見守る。
さっき茶化していたりしたが、それはノーカンだ。
「さすがに、私も怒りますよ!!」
「やっちゃえリップ!」
「遠慮することなんかないからね!!」
「はい! 行きます!!」
リップはそういうと、一気に距離を詰め、ワイバーンを叩き潰していく。
デーモンは、ドレイクが撃つことで標的を変える。
容赦なく叩き潰していくパッションリップとドレイク。
時々放たれる宝具によって、回復と殲滅が同時に行われる。
「さて、そろそろ敵も減ってきたかな?」
「そうみたいだねぇ。リップがよくやってくれてるよ」
「うわーん! どうしてみんな私を狙うんですか~!」
「……本人は周りが見えてないみたいだけどね」
「そうみたいだねぇ……」
泣きながらワイバーンを押し潰し、吹き飛ばしていくパッションリップは、自分が手当たり次第に殴っているようにしか見えなかった。
「リップ~! 帰ってきて~!」
「ふぇ!? あ、わぁ!! 真っ赤ですぅ……」
「いや、消滅してるから真っ赤ではないから。むしろ、クレーターの方が目立つから」
倒されたワイバーンは全て消滅していっているので、実際はオオガミの言っているようにパッションリップが暴れた際のクレーターが目立っている状況だった。
「あ、あの……ごめんなさい!」
「いやいや、別に謝る事は無いよ。暴れてもいいような場所だろうし」
「まぁ、気にすることなんてないさ。暴れたくなる時なんて、誰にでもある事さ」
「そうそう。だから、気にしない気にしない。ほら、次で終わりなんだから、元気出して」
「ま、マスター……! ドレイクさん…!」
落ち込んでいたパッションリップを励ました二人は、パッションリップが再び立ち上がるのを待って、最後の戦いに挑むのだった。
本当、ワイバーンに集中攻撃されて一ターンで死にかけるとか、恐ろしいんですが……