「ミラーハウス……! これ自体はそれほどでもないのだが、迷いすぎて飽きてきた」
「バラキー、何も考えずに走って行くんだもの。ちゃんと考えて歩かないと迷子になるに決まってるわ」
「というか、拠点に帰るって言って、そのまま遊びにいくとは思わなかったよ。拠点とは一体」
「こんなことになるとは思っていたので、別に気にしてはないのですが……まぁ、姉様はマスターといるはずですし、問題ないですね」
そういう彼女たちは、ミラーハウスの中を探索していた。
別段深い意味はなく、強いて言うなら、目についたから入った。だろうか。
ともかく、入ってから既に30分。最初は目を輝かせていた面々も、既に方向感覚を失い始めていた。
「う~ん……別に、門で出ちゃえばすぐなのだけど、それは何か違うわよね……」
「まぁ、私も先導はする予定はないですが……後30分経っても出られなさそうなら、出ます」
「つまり、それまでに脱出出来れば私たちの勝ちだね! 頑張るぞー!」
「おー!」
「あ、おい! 勝手に行動すると更に迷子になるだろう!?」
走っていくジャックとバニヤンを追いかけるバラキー。
アビゲイルとアナは、何故かぼんやりとしている茶々を引っ張って、三人を追いかけるのだった。
* * *
「って感じで、右沿い。もしくは左沿いにひたすら歩いてるだけで、自然と出口に着くわけです」
そう話ながら歩いているのは、オオガミとエウリュアレ。
アビゲイル達が入った30分後に入ったので、つまり入ったばかりということだ。
「ふぅん? でも、普通に入ったみたいだけど。壁沿いに歩いてないじゃない」
「普通に楽しもうとしてみただけなんだけどね。まぁ、その方法だとしらみ潰しになるからっていうのもあるんだけどね」
「まぁ、あんまり長居はしたくないものね。ここ、感覚がおかしくなるもの」
「不安になるしねぇ……」
常に自分達の姿が見えていて、前後左右から常に視線を受けているような不思議な感覚。
苦手な人はとことん苦手だが、平気な人はおそらくいくらでも平気なのだろう。
「ん~……ミラーハウスは普通に難しいのに、更に魔力が吸われると来た。これ、魔力不足で死なない?」
「長居しすぎると座に帰りそうな勢いよ。というか何で入ったのよ」
「いや、目についたから……」
「そんな安直な理由で……いえ、まぁ、いつものことだし気にしないけど……脱出出来れば良いわね。アビーがいないから、緊急脱出も出来ないわよ?」
「まぁ、たぶん何とかなるでしょ」
そう言って二人は歩き続ける。
彼らがアビゲイル達と会うまで、後少し――――。
動画で見るだけでも怖くなってくるミラーハウス。ちょっと実際には行きたくないかも……