「「「トリックオアトリート!」」」
左から順に、カボチャ頭にオーバーオールのチェーンソー少女、目の部分だけ開いている白い布を被っている双短剣少女、箒を持った魔女服アビゲイルの三人。左二人はともかく、アビゲイルは盛大なボケにしか見えないのだが、本当にそれで良いのかと突っ込みたい。
ちなみに、エウリュアレは男装して吸血鬼に仮装し、その隣には鎖鎌を持った黒いフード付きのローブを被った、白い骸骨の仮面をつけている少女が立っている。
「よしよし。じゃあ、順番に配るから並んでね。ところで、前面の三人の声は聞こえたけど、後ろの二人は良いの?」
「三人がもらってから改めて言うわ。後二人来てないもの」
「そう? じゃあ、先にあげちゃおう」
そう言って、オオガミはお菓子の入った袋をアビゲイル達に手渡ししていく。
そして、配り終えた辺りでエウリュアレが、
「あぁ、やっと来たわ」
そう言って、視線を向ける。オオガミもその方向へ目を向けると、そこにはミイラの仮装をしたアナと、バーサーカー姿のバラキーがいた。
「すいません姉様。巻き付けるのに時間がかかってしまって……」
「えぇ、気にしなくて良いわ。今から貰うんだし」
「む? ククッ、あぁ、
黒いローブの少女の前で何やら頷くバラキー。
しかし、少女の方は不満なようで、鎌を持って斬りかかるが、骨刀で軽くいなされ、鎌が地面に弾かれたせいで手が痺れたのか、そのまま取り落とす。
「あぁ、これは回収しておきますね。危険ですし。これ以上は自分のでやってください」
「あぁっ! ハロウィン終わるまでは貸してくれる予定だったじゃん! そんなぁ!」
「だったら雑に扱わないでください。壊れたらかなり困るんですから」
「むぐぐ……是非もなし……」
そう言って倒れる、黒いローブの少女改め茶々。
しかし、すぐに復活すると、
「よし! マスターマスター!! トリックオアトリート! お菓子ちょうだい!」
「トリックオアトリート! 吾にも菓子を寄越せ!」
「トリックオアトリートです。くれないのなら観覧車に吊るします」
「殺意全開のイタズラだね。もうイタズラの域を越えてるよ」
言いながら、茶々、バラキー、アナの三人にお菓子を渡す。
そして、エウリュアレは妙に良い笑顔で、
「Trick and Treat」
「……えっ?」
「Trick and Treat」
「…………」
「あら、意味が分からないかしら。お菓子もちょうだい。イタズラもさせなさい?」
「……アナ。あなたの姉様がご乱心だよ」
「ご乱心も何も、姉様は最初からその予定でしたよ? 諦めて両方いってください」
「バカな……アナが止めないとか、もうダメじゃん……」
「失礼ね。貴方、私をなんだと思ってるのよ。流石にそこまでの要求はしないわよ」
「……お菓子でご勘弁を」
「えぇ、そうね。じゃあ、これで目的の半分。さぁ、イタズラの時間よ?」
「あの、その、えっと……撤退!」
「逃がすわけ無いじゃない」
そう言って、逃げ出すオオガミを、エウリュアレが全力で追いかけるのだった。
いつもよりはっちゃけてるエウリュアレ。とはいえ、やってることがいつも通りな気がする不思議。