「うむ。特には無かったな」
「暖かかっただけね。ジェットコースターも無かったわ」
「マハトマ~って叫んでる人がいただけだし。というか、いつもあの人マハトマしてない?」
ファイアーマウンテンの観光をして、フードコートへと戻っていく三人。
持っていたお菓子は食べ尽くしたので、補充のために戻っているようなものだが。
その時、ふと目に映ったティーカップにバラキーは、
「そう言えば、ティーカップは面白いのか? 吾にはとんと分からぬが」
「もしかして、バラキー乗ってないでしょ。乗ってみればわかるって。ほら、行ってみよう行ってみよう」
「あ、私も乗りたいわ。早く行きましょ。イベントが終わる前に遊ばなきゃ!」
予定を変更し、ティーカップへと向かっていく三人。
「(ふっふっふ……ここのティーカップは聖杯の最強エンジンで、且つブレーキが息をしてないから回せば回すほど加速することは確認済み! 思いっきり回してバラキーを酔わせれば勝ち!)」
「(とか、考えていそうだ。いや、吾が茶々より先に酔う心配はないのだが。まぁ、好きにやらせてみるのも一興よな)」
茶々とバラキーは互いにそんなことを思いつつ、三人で同じカップに乗り込む。そして、茶々がハンドルを握ろうとし――――
――――アビーが触手を使って全面を奪う。
「えっ」
「あっ」
「ふ、ふふふ……一回全力で回してみたかったの! 行くわよ!!」
直後、じわじわと、だが確実に上がっていく速度。
周囲の景色は、段々と物と物の境界が無くなっていき、やがて線のようになっていき、体が浮くような感覚がやってくる。
流石にこれは不味いのではなかろうかと茶々が思ったときには既に手遅れ。逃げられるような速度はとうの昔に通りすぎており、逃げ場などなかった。
視線をバラキーに向けると、しかし既にそこにはバラキーは居らず、ただポツンと空間が空いていただけだった。
「(仕切り直しで逃げたな!?)」
正解だった。補足するとしたら、アビゲイルが回し始めた段階で既に逃げ出していたということだろうか。
その証拠に、
しかし、そんなことは知らない茶々としては、今この状況をどうやって打破するかを考えるしかない。
だが、どういう手段をとろうか考え始めた直後、
「あっ」
「えっ」
パキンッ! という小気味良い音と共に、アビゲイルの手にはハンドルが握られていた。
ただし、そのハンドルはティーカップとは接しておらず、宙に浮いている状態。
簡潔に言って壊れた。
「…………」
「…………」
「……てへっ」
「いや洒落にならんし!」
完全に詰んだ茶々。
どうあがいても死なので、泣きながらティーカップから飛び出していくのだった――――。
はたして、茶々の運命やいかに。
だが、それ以上に、ファミパン聖女に捕まったバラキーの方が心配。ファミリーにされてない? 大丈夫?