「吾まだなにもしてない!」
「バラキーがやりました! 茶々知らない!」
「私はまだ何も言ってはいないのだが……」
「だがキャットには分かるぞ。例え喋らなかろうがその腹の虫は全てを語る。覚えておくのだな」
椅子に縛り付けられ、逃げることすら許されないバラキーと茶々。
無罪を主張するバラキーと、バラキーを売って助かろうとしている茶々。しかし、エミヤはともかく、キャットは何故か爛々と目を光らせていた。
「まぁ、二人とも聞かれることは分かっているみたいだが、とりあえず聞いておく。お菓子を盗んだな?」
「吾がまだ何もしてないのは本当だ! というか、後二人いた気がするのだが!!」
「その肝心の二人がいないってことはやっぱバラキーが犯人なんじゃないかな! ほら、やっぱ茶々無罪! 叔母上の所に逃げさせてもらいます!」
「それは許さんのだな。何故かって?それは至極単純。茶々はクッキーを持っているからだ。ふははバカめ。エミヤは騙されようともこのキャットは騙せないぞ」
「お菓子の棚に近づけてもないのに!? マジですかうわマジだー!」
キャットの手が茶々の懐に入り、そこから小さな袋に入ったクッキーが出てくる。
そして、その事実に誰よりも驚いているのは茶々だったりする。
「茶々……汝、吾を犯人とか言いながら自分は盗んでいるとか、流石にどうかと思うぞ……」
「茶々お菓子の棚に触れてすらいなかったんだけど……えぇ……」
「だが事実菓子は出た。つまり有罪。罰を受けるがいい」
「いやぁぁぁ!! 茶々は嵌められたんだぁぁぁ!」
茶々の抵抗虚しくキャットに連れ去られていった。
それを見送ったエミヤとバラキーは、
「うむ。まぁ、犯人は茶々ということで。というか、本当に後二人いた気がするのだが……」
「事実、いたとしても証拠がないからな。諦めてくれ」
「そんなぁ……」
青い顔になるバラキー。しかし、無慈悲にも茶々と同じように連れていかれるのだった。
* * *
「本当に置いていって良かったの?」
「うん。だって、お母さんが置いて行っていいって言ってたし。それよりも、早くスカサハさんのところに持っていかないと」
茶々の懐にクッキーを入れ、自分達に関する情報を消し去ったジャックとバニヤンは、スカディの元へと走っていく。
「あら、ジャックとバニヤン。もう戻ってきたの?」
「ん、来たか。よしよし。良くやったぞ」
「わーい!」
「褒められたー!」
「……真犯人は貴女だったの……?」
さりげなくジャックとバニヤンを使って自分のお菓子を手に入れたスカディは、隣で驚いているアナスタシアを横目に、そのお菓子を二人と一緒に食べ始めるのだった。
黒幕はスカディ。全ては彼女の手のひらの上……