「姉様帰ってきました」
「エウリュアレ。妹様が荒ぶっておられます」
「良くやったわアナ。お手柄ね」
「ダメだ敵しかいねぇ」
簀巻きにされてマイルームに転がされるオオガミ。
既にほとんどのサーヴァントがシュメル熱から回復しているが、病み上がりということもあって、まだ寝ているサーヴァントも何人かいる。
エウリュアレの膝の上で寝ているアビゲイルもその一人だ。
「さて、それじゃあマスター。まずはお疲れ様。シュメル熱は去年と同じくらいの大災害だったわ。えぇ。ノッブ以外倒れていたもの。まぁ、一部無理に動いて悪化させたのがいたけども」
「あぁ、うん。見れば分かる。アビーの事だね」
「えぇ、そうね。まぁ、回復したアナスタシアが若干泣きながら茶々が倒れたって言いに来たときは、一体何事かって思ったけども」
「ちょっと待って。ってことは、茶々も無理してたってことでは?」
「まぁ、そうなるわね。ついでに、さっきからずっとBBがあっちに行ったりこっちに行ったりしてるわ」
「それノッブ倒れてない!? 見に行きたいんだけど!?」
「あら、偶然ね。私も見に行きたいと思ってたの。じゃあアナ。マスターを引きずってきてね?」
「はい。問答無用で引きずり回します」
「おっと仕返しの精神だね!? さてはエウリュアレ分かってるね!?」
冥界を連れ回した恨みを今ここで晴らすかの如く目を輝かせているアナに、オオガミは頬を引きつらせる。
そんな二人を楽しそうに見ているエウリュアレは、アビゲイルが起きないように、自分の膝と枕を入れ換えて、軽い足取りで部屋を出ていくのだった。
* * *
「あ、マスター! 帰ってきたのね! スカサハ様と会話が成り立たないの! 助けて!?」
「あぁ、お前か。私には人の扱いが分からず難儀していたのだ……代わってくれないだろうか」
「看病のお返しは極寒送り……がくっ」
何故か霜が降りている室内に、オオガミ達は頬を引きつらせる。
* * *
「で、何があったの」
あの後、急いで茶々を引きずり出してノッブの工房に投げ込んで、同じくぶっ倒れてたノッブの隣に寝かせていた。
当然BBが悲鳴をあげて慌てていたがオオガミ達は気にしている余裕はなかった。
「いえ、私は額に乗せるくらいの氷を作ろうとしただけよ? そしたら――――」
「その程度では足りなかろうと、私が部屋を冷やしてな。とても叱られた」
「なるほど。つまり善意の暴走ってわけだ」
「うん。そういうことだ」
「素直ですねスカサハ様。とりあえず、アナスタシアはそういうことで納得できるかな」
「……えぇ、反省してくださっているのなら問題ないです。次に気を付ければ良いですし」
どうやらアナスタシアとスカディが和解したようなので、オオガミは頷きつつ、
「うんうん。よし、それじゃあ二人とも看病手伝ってもらうよ。ちなみに、ノッブの方はBBちゃんが責任をもってお世話をするので放置で良いです」
「あれ!? BBちゃんさりげなくとんでもないこと押し付けられました!?」
ノッブの事は全部任せた。
そう暗に言われたBBが抗議の声をあげるが、アドバイス無しでも看病できる人は放っておくのが今の最適解だろう。
「よし、エウリュアレはアビーの世話があるだろうから二人は帰って良いよ」
「……なんでマスターは脱出してるのかしら」
「茶々さんの部屋に入った瞬間から抜け出してましたよ?」
「なんで自然に脱出してるのかしら……いえ、良いのだけど。じゃあ、行ってくるから、二人にちゃんと教えるのよ」
「当然。得意分野だよ」
エウリュアレとアナが部屋を出ていくのを見送り、オオガミ達は行動を始めるのだった。
冥界を下るよりもわりと大惨事なカルデア。シュメル熱が治ったら看病してるサーヴァントが倒れる惨劇……まだ看病ループは終わらない……