「ねぇエウリュアレさん。マスターはどうしたの? 明らかに風邪とは関係無いダメージを負ってるみたいなのだけど」
食堂にて、何故か机に突っ伏しているオオガミを見て、首をかしげて隣にいるエウリュアレに聞くアビゲイル。
それに対して、エウリュアレは苦笑しつつ、
「あれは、石を全部溶かしたのにエレシュキガルが来なくて、その上使ったことがバレてマシュにひたすら叩かれただけよ。だから気にすることはないわ」
「そ、そう……? でも、マシュさんに叩かれたのなら大ダメージなんじゃ……」
「まぁ、マシュも手加減してるし、マスターもダメージを軽減してるから大丈夫じゃないかしら。だって、あれはどちらかと言うと、精神的なダメージだもの。隣に行ってきたら?」
「……うん。行ってくるわ」
エウリュアレに言われるがままにオオガミの隣へと移動するアビゲイル。
エウリュアレがその様子に微笑んでいると、隣に座る人影が。
振り向くと、何故かボロボロのノッブがいた。
「ど、どうしたの?」
「うむ……案の定秘密の工房を作ったんじゃが、耐久テストと称してBBと一戦交えて、このザマじゃ」
「……BBは?」
「ん? 工房で寝とる。耐久テストは合格じゃな」
「さりげなく勝ってるのね……」
曰く、BBが昔の状態なら負けてたかもしれなかったらしい。
ともあれ、秘密工房は出来たらしい。
後で遊びにいこうとエウリュアレは思うが、そもそもカルデアの秘密工房も見付けられていない自分に見付けられるかと考える。が、オオガミがいればおそらく大丈夫だろう。
「それより、マスターはどうしたんじゃ? 爆死か?」
「まぁ、そうね。エレシュキガルが来なくて精神的にやられてる感じ。加えて言うと、その後マシュに見つかってかなり怒られたからそっちもあるんじゃないかしら」
「あ~……だからアビゲイルが慰めに行ってるんじゃな。あれ、お主は行かんのか?」
「私は別に。アビーがいれば十分よ」
「そうか……? まぁ、それで良いなら良いんじゃけど……」
「えぇ、良いんだから良いのよ。というか、BBは放置で良いの?」
「ん? あぁ、BBはちゃんと布団に寝かせたからな。別に、必要以上にいる理由は無いじゃろ」
「そうね。ついでに言うと、私がマスターの所に行かないのは同じ理由よ」
「……まぁ、確かに。エウリュアレでなくとも、気にかける者はおるしな。誰もいなくなってからでも良いのか」
「えぇ。とりあえず、甘いものでも食べる? マスターがうっかり食べたのとは違う、ショートケーキだけど」
「……うむ。食べる」
そう言って、エウリュアレが差し出したケーキをノッブは受け取るのだった。
エレシュキガル……来てくれると思ったんだけどなぁ……