「ふぅ……甘くて美味しいのだわ」
「まぁ、ココアとチョコクッキーのコンボだし、美味しいのは間違いないわよね」
「……そのクッキー、昨日マスターが自分用に焼いていたような気がするのですが」
幸せそうにしていたエレシュキガルの表情は、アナの一言で凍り付く。
「別に、マスターの事だから気にしないと思うのだけど」
「……まぁ、それもそうですね。気にしなくても良いでしょう」
「そんな気軽に!? ほ、本当に良いの!? っていうか、こんなに美味しいのを作れたのね!」
「姉様がやるなら大体許されるので。いえ、姉様でなくても大半は許されますね……」
「フリーダム過ぎるのだわ……! それで成り立つのね……」
「あぁ、いえ、たまに暴動が起きるので、そうとも言い切れません」
「今は鎮圧出来るのが少ないからねぇ……暴れられたら鎮圧にちょっと時間がかかるわ」
「まぁ、姉様が関わってない限り私が止めるので問題ないです」
「やっぱりここ、物騒な所じゃないかしら……!?」
マスターが夜こっそり作ったお菓子を盗んだり、暴動が起こったりする時点で、危険しかない。
とはいえ、もはやその状況が日常となっているので、誰も突っ込まないのが現実だ。
「今のうちに慣れていた方が良いわよ? みんなが帰ってきたら、絶対悪化するわ」
「そんなに……!? というか、なんか少ないな~って思ったら、やっぱり少ないのね?」
「えぇ。北欧に捨てられてきたのと、再召喚されていないのに分かれるけどね」
「えっ、捨てられてきた……?」
「アビーがね。適当なところで、ポイポイポイ~って」
「そんな気軽に置いていかれるのね……」
「いえ、文字通り捨てていっていたわ。門を足元に開いて、落ちたサーヴァントがそのまま車外に出されるの。まぁ、ほとんどすぐ帰ってくるんだけどね」
「もしかして、いつか私もされるんじゃ……」
「いえ、あれは危険としか言い様のないサーヴァントを不法投棄してただけだから。そのまま海の中を漂っててくれないかしら……」
「それは無理です。昨日廊下で会いましたから」
「……毎度、帰ってくるのが早すぎるのだけど……」
「そんなに追い出されているの……?」
「まぁ、会えばきっと分かるわ。あれは追い出すべきだと思うもの」
とはいえ、それほど迷惑をかけているかと言われると微妙なところである。むしろ、追い出された後に食料を持って帰ってくる辺り、食料調達委員として使われている節があった。
そんな話を聞いて、エレシュキガルはうんうんと考える。
「そんなに追い出されるほどのサーヴァント……怖いけど、でもちょっと見てみたい気もするのだわ……」
「そのうち嫌でも会うことになるわ。別に、そんなに身構える必要も……ないわ。たぶん」
「その間と最後のが一層不安にさせてくるのだけどっ!」
三人はそんな風にのんびりと雑談をするのだった。
マスターの物は実質エウリュアレの物。つまりマスター用のクッキーはエウリュアレの物ってことですね(超理論