「あ~……茶々、家出したい。家出と言うより部屋出したい。スッゴイ寒い」
「いや知らん。というか、工房に来るでないわ」
新生工房でのんびりとしていたノッブの元へ突撃を仕掛けた茶々。
しかし、ノッブは適当に返した後、少し考え、
「ふむ……ボイラー室の隣にいたから寒いというのとかなり離れていたが……うむ、温まれるようなものが必要というわけか」
「うんうん。叔母上ならちょちょいのちょいでしょ?」
「そうじゃな。ボイラー室にいけば良いんじゃね? 明らか暖かいじゃろ」
「それ暖かい越えて暑いよ!? もうちょっと良い感じのところは!?」
「ん~……そうじゃのぅ……あぁ、そうだ。よしよし、思い立ったらすぐ行動。着替えを持って参れ。あと、仲の良い奴等にも伝えておけ。あぁ、それと、女性限定じゃ。男性は禁制じゃし」
「わ、わかった。行ってくる!」
そう言って、工房を飛び出していく茶々。
ノッブはそれを見送り、さりげなく自分の個室を用意しているBBを部屋から無理矢理引きずり出す。
「な、なんですか! 人がせっかく大人しくしてたのに!」
「カルデア中の監視カメラにハッキング仕掛けて覗き見してるのは大人しくしとるとは言わんからな?」
何枚ものモニターに映し出されているのは、カルデア内の監視カメラの映像。当然、リアルタイムで動いているものだ。録画データではない。
「うぅぅ……機材の調子を確認していたら見付かるとは……いえ、ノッブにしかバレてないなら問題ないですね。口封じをすれば良いんですし」
「まぁ、それは置いておくとしてじゃ。今はお主の力を借りて、ちょっとしたイベントをしようかと思ったんじゃよ」
「……私に何をしろと?」
「いやなに、そんな難しいことじゃないんじゃけどね? ちょいとシミュレーションルームを使って、小旅行をしようかと思ってな。何、実行してからのお楽しみじゃ」
「なんで勿体振るんですか……まぁ良いですけど。期待くらいの事はしてくださいよ?」
「まぁ任せておくが良い。とはいえ、期待に添えるかは分からんがな」
「んもぅ。そういう時は言い切ってくださいよ。どうせ出来るでしょう?」
「いやぁ……こればかりは相性じゃしねぇ……」
何かと言葉を濁すノッブに、謎の不安を覚えるBBだったが、なんだかんだと言っても、実際に反映するのは自分なので、その時点で何をしたいのかが分かるだろうと考える。
「はぁ……それじゃ、シミュレーションルームに行きますか」
「うむ。あ、そうじゃ。着替えは持っておけよ?」
「着替え? まぁ良いですけど……本当に何をさせるつもりなんです?」
「大体着替えが必要なところとか限られると思うんじゃけどね」
疑問を残したまま、二人は工房を出るのだった。
まぁ、着替えが必要で、小旅行で、この季節……お察しの方は多いと思います。