「くぅ……まさか早々にアンリが死んでしまうとは……」
体を洗い終わり、いざ風呂へ入ろうというところで正確無比に脳天へ向けて銃弾が叩き込まれたアンリは、本気で悔しそうな顔をして強制送還された。
オオガミはそれを見送り、アンリの分まで楽しむのだと決意を固めたが、
「それにしても、なぜバラキーを連れて逃げてるのか……」
温泉を堪能し、満足とばかりに服を着て脱衣所を出たところで、必死の形相のバラキーと、背筋に寒気が走るくらい怖い笑顔のBBがいた。
咄嗟に逃げ出したは良いが、その後ろをピッタリとバラキーがついてきて、同じようにBBも追ってきていた。
なので、バラキーの仕切り直しを使って逃げたのは是非もないことだろう。
「それで、なんで狙われてたのさ……」
「し、知らぬ……吾は何もしておらぬ……強いていうならば、お菓子を食べ漁っていたくらいなのだが……な、何か不味いものでも食べたか……?」
「ん~……テンプレだけども、名前付きのとか?」
「そのくらい、当然吾は確認して――――あっ」
「さては心当たりあったね?」
「……そういえば、名前の書いてあるプリンがあったようなと思ってな……そうか、あれが原因かぁ……」
「……見捨てていい見捨てていい?」
「代わりに常について回るが良いな?」
「それは流石に困る……仕方無いかぁ……」
外へ逃げ出した二人は、雪が降り止んだとはいえ、気温的にはほぼ変わらない寒い中、施設の周囲を歩いていた。
「ねぇ……これさ、どこかで温泉に当たらない?」
「その時はその時。というか、軽く見回ってた感じ、温泉があるとこは崖に近いから、崖の壁を掴んで移動すればバレずに反対側に行けるのではないか……?」
「どこにそんな筋力と体力があるのさ……!」
「ふふん。そのための鬼。そのためのサーヴァントであろう?」
「……いや、確実にこのためではないとは思うよ? いやまぁ、便利ではあるけども」
サーヴァントとは何なのだろうかと一瞬考えてしまったが、そもそも人のものを食い逃げして逃げ切るためのものではないと気付くオオガミ。
だが、バラキーが無駄に自信満々なので、もしかしたらその可能性もあるのではないかと考えてしまうが。
「まぁなんだ。吾はBBにさえ見付からなければ良いのだそして、忘れた頃にさりげなく戻る。そうすれば、吾は謝らず、そしてBBは怒りもしない。それこそ、吾は不幸にならない結末だ!」
「うん……そうだね。絶対にうまくいかないと思うけど、出来たら良いね……」
ドヤ顔のバラキーに、疲れきったような声で答えるオオガミ。
なんせ、ことこのカルデアにおいては、一、二を争うほどに執念深いのが、BBだ。その計画が遂行されるのに果たしてどれ程の時間が必要なのか。オオガミは考えることをやめたのだった。
アンリは犠牲となったのだ……物理的に。
というか、バラキーって、出てくると高確率で仕切り直し使う状況になってない……? なんで……?