「汚いっ! 流石女帝汚いっ!」
「でも、正直予想の範囲内だったわね。もっと凄いことをしてくるかと思ったわ。爆発とか」
「爆発って……そんなまさか……いや、それはそれで気になるけども」
「それでリングが破壊されたら激怒するだろうからな。流石に誰もしないだろう」
先程の中華代表との戦いを越えて、ダウンしているケツァルマスクを介抱しつつ、三人は話す。
「ところで、北斎さんは?」
「そういえば、今日は見てないのだけど……もしかして、外にいるのかしら」
「あぁ~……ちょっと見に行ってくるよ」
オオガミはそう言うと、待機室の外へ出る。
外はやはり雪景色で、雪の積もった密林という珍しい状況に心を揺さぶられたのか、予想通り北斎はそこにいた。
「うん? あぁ、ますたぁかい。その様子からして、おれを探しに来たってところか」
「まぁ、そんなところ。良い絵は描けそう?」
「応。たまには外に出るのも良いものさ。とはいえ、既にかるであの中だけでもネタには困らねぇけどな。記録を見るだけで面白そうなのはかなりあったね。ま、体験までは出来ないだろうけど」
「流石にねぇ……まぁ、これからも機会があったら色んな所に行ってみようか」
「無理しない程度で頼むとするよ。まだ描き足りねぇものがわんさかあるからな」
そう言って、楽しそうに筆を走らせる北斎を見て、オオガミは大丈夫そうだと思い中へ戻ることにした。
すると、先程まで奥のスタッフルームに籠っていたマルタが出てきていた。
「あ、マルタさん」
「あぁ、戻ってきたわね。何をしていたのかしら」
「あぁ、姿が見えない北斎さんを探しにちょっと外まで。何かあった?」
「いえ、別に何かあったわけではないわ。ただ、姿が見えないから気になっただけ。それと、カルデアからの通信で、体力作りは禁止だって言ってたわ」
「なんでっ!? 体力作り禁止の理由がよく分からないっていうのとか諸々聞きたいことはあるけど、何よりも分からないのは、なんでカルデアにいる誰にも言ってないのに向こうでバレてるのかな!? 誰か言ったの!?」
「向こう曰く、エウリュアレさんがなんとなく体力作りをしているのではないかと呟いたので念のために禁止にしておこう。だそうよ」
「んな理不尽な!? というか、ピンポイントで当ててくるなあの女神サマ!」
「なんというか、災難ね。でも、諦めてもらうしかないわ。というか、マスターとしては十分すぎるくらいのスペックだと思うのだけど」
「それはそれ、これはこれ。あって困るものでもないしね!」
「まぁ、それはそうだけど……とりあえず、言ったからね」
そう言うと、マルタは足早にいなくなるのだった。
さりげなく炸裂している女神パワー。あの女神サマ怖いわぁ……