「残り一日……それさえ乗りきれば、この周回も終わりなのだわ……!」
「まぁ、正確には一日半だけども。それさえ乗りきれば半年近くはないはず」
「ら、ラストスパートなのだわ! 私、ファイトー!」
張り切るエレシュキガル。しかし、傍らで倒れている孔明は、既に目に光を失っていた。
ちなみに、スカディは想定外な事にやることがなかったので、一足先にアビゲイルと一緒にカルデアに帰った。
その時の孔明へ向けたドヤ顔は、きっと後で報復されているのを考えていないからこそ出来たのだろう。
「おかしいだろう……一番働いている気がするのだが……」
「一人だけガンガン絆レベル上がっていくしねぇ……うん。ファイトだよ先生」
「これはもう、絆レベルというよりも、過労死レベルだろう……全部貯まると礼装を落として死ぬ」
「なんてこったい。先生が壊れた」
「あっちの女神はあっちの女神で壊れたがな」
倒れたままエレシュキガルを指差す孔明。
確かに、エレシュキガルはエレシュキガルで、暴走気味ではあった。ただ、完全に意気消沈して今にも座へ帰りそうな孔明と比べれば幾分かマシだろう。
「まぁ、それでも頑張ってもらうしかないです。ファイトです先生」
「なら休みを寄越せ休みを。流石にこれは重労働過ぎる。労働基準法違反だろう」
「えっ。国が滅びてるから法も何もないのでは? 故に無法ってことでこれは無罪ですね先生っ!」
「ちょっと良いこと言った風に言うな! それに、いくらなんでもこれ以上は辛い。一時間ほど休憩させろ」
ようやく起き上がる孔明。
オオガミは孔明の要求への返答を考え、
「まぁ、それくらいは普通に良いけど……というか、食事中とか、寝てる間は自由時間だったような?」
「それはそれだ。働き詰めは集中も続かん。お前も休め。というより、お前が休め。周回しすぎだ」
「しっかり休憩してるつもりなんだけどなぁ……」
「精神的な疲れが溜まってる。気分転換に散策でもしてきたらどうだ。何、その頃にはあの女神も落ち着いているだろうさ」
そう言い、再び孔明が指差した先にいるエレシュキガルは、何故かその場に倒れて、ガゼルに鼻先でつつかれていた。
「……助けた方がいいかな」
「その必要はないだろう。むしろ、放っておいて良い。ほら、散歩でもしてこい。その方が効率も良くなる筈だ。根を詰めすぎてもペースが落ちていくだけだからな」
「は~い。行ってきますよ~」
オオガミはそう言って、二人のもとを離れて密林へと入っていくのだった。
実際はたぶん辛いからというよりも、頼られるのが嬉しくてひたすらやって止め時を見失ってるようにも見えなくもない……