旅行から帰ってきたわよ(いつもののんびり空間が帰ってきたよ)
「ふぅ……長い旅行だったわね」
「長い労働だったんだけど」
「まぁまぁ。マスターもなんだかんだ楽しんでおったじゃろ?」
「それはそれだと思う」
最近定位置と化してきた食堂の一角で、いつものようにお菓子を食べるエウリュアレ。
オオガミは机に突っ伏し、ノッブは愉快そうに笑っていた。
「まぁ、レイシフト実験は成功だし、それなりに休暇にはなったしでいい感じじゃない? 働いてるって言っても、いつもの旅とは一味違う新鮮な感じだったでしょ」
「そうだけども……」
「なんですか。姉様に不満があるなら命を対価に聞いてあげます」
「ちょっとエウリュアレさん。妹さんがしばらく会ってなかったせいで凶悪になってるんでどうにかしてください」
エウリュアレに、何時にも増して凶暴になっているアナをどうにかしてほしいと抗議すると、エウリュアレは少し考えたあと、
「アナ。下手なことをするとエルキドゥの攻撃が私まで飛んでくるからもうしばらく我慢して」
「姉様が言うなら仕方ないですね。大人しくしておきます」
エウリュアレに言われて大人しくなったアナを見て、オオガミは考えると、
「姉様。妹さんがマスターの言うこと聞いてくれないんですけど。どうなってるんですか」
「それは貴方が悪いと思うから諦めなさい」
「バッサリ言うなぁ……」
鋭い切り返しに精神的ダメージを負うオオガミ。
「まぁ、アナも素直じゃないもの。基本トゲしかないから」
「たまに優しいけどね」
「そう。たまに、よ。基本はこんなじゃない」
「まぁ、そうだけども……」
「なら別にいいじゃない。というか、ここ最近気にしてなかったじゃない」
「そうだけどさぁ……気になったら気になっちゃうもんなんだよ」
「そう? じゃあ、どうにかするのね。私は手伝わないけど」
「えぇ……手伝ってくれないの……?」
「当然でしょ……なんで手伝うと思ってるのよ……」
「あの、本人を前にそういう話しますか……?」
居心地が悪そうな顔のアナを見て、二人は顔を見合わせると、
「まぁ、マスターのせいよね」
「えっ、何かした?」
「目の前で話す話でもなかったわ。自重しなさい」
「えぇ……珍しく叱られた……」
珍しくオオガミを叱るエウリュアレ。
とはいえ、そもそもエウリュアレに叱られるようなことはほとんどないのだが、エウリュアレに叱られるのが珍しすぎてオオガミは困惑していた。
「まぁ、そのうちなんとかなるでしょ。えぇ、そんな感じよ」
「雑だなぁ、この女神さま」
「貴方のサーヴァントらしいでしょ?」
「……そうだね」
微笑むエウリュアレに、オオガミは苦笑いを返すしかないのだった。
紅ちゃんは来てくれなかったよ……