「はぁ……なんでこうなるんでしょう……」
「あらリップ。何が不満なの? こんなにキレイに飾ったのに。フワフワと飾ったのに。欲張りさんはダメなのだわ!」
トレーニングルームにて、ため息を吐くリップに、唇を尖らせて叱るナーサリー。
リップはいつもと違い、フワフワな白セーターを着ていて、更に4つの金色の星がついている冠を被されていた。
「でもですよ? 私にはこのお洋服は似合わないと思うんです。それに、手袋とか、つけられませんよ」
「もう。なんでそんなこと言うの! バニヤン、お願い!」
「うん! 頑張るよ!」
ナーサリーに言われて、体を大きくしてリップを持ち上げるバニヤン。
そして、その浮いたリップの手に手袋をはめるナーサリーとジャック。
「ふ、不思議な気分です……私が持ち上げられるなんて……」
「ふふん! バニヤンは力持ちなんだから!」
「おもーい! 早くしてー!」
「バニヤンがんばれー!」
無邪気に言う少女たちの声は微笑ましいものだが、超重量ということを考えると、死と隣り合わせで作業をしているということだ。
よって、この状況は持ち上げられている側からすると、とてつもなく怖かったりする。
「あ、あの……そろそろ下ろしてくれてもいいんですよ……?」
「ナーサリー! 終わった~?」
「もう大丈夫よ~! ゆっくり下ろしてね~」
ナーサリーの返答を聞き、バニヤンはゆっくりとリップを下ろす。
降りたリップは、いつもと違う感触に新鮮さを感じる。その手にはフワフワな手袋が。指先は穴が開いており、地面を擦ることはなさそうだった。
その感触をリップが確かめている間に、バニヤンは小さい姿に戻っていた。
「ふわぁ……ありがとうございます! でも、なんで突然……?」
「エウリュアレが持っていってって!」
「リップにあげてって!」
「頼まれたなら、やるしかないわ。ジャンヌは見つからなかったから一緒に出来なかったのだけどね」
ジャンヌリリィは、現在長女と次女に突撃しに行っているため不在なのだが、ことごとくすれ違いになったナーサリー達は知らないのだった。
リップはそんな三人の主張を聞いて、少し考えると、
「エウリュアレさん、マスターから頼まれたんでしょうか……」
「それなら不思議ね。なんで自分でしないのかしら」
「ん~……まぁ、マスターは色々やることがありますし……でも、手芸が出来るって聞いたことないんですけど……」
「マスターだもの。私たちがいない間に出来るようになったのかもしれないわ。流石ねマスター」
「そうですね。後でお礼を言わなきゃです」
「なら今から行こう! すぐ行こう!」
「ゴーゴー! 思い付いたらすぐ実行って、ノッブが言ってた!」
そう言って、バニヤンとジャックはリップの袖を引っ張るのだった。
珍しくオオガミ君不在。でも存在は主張していく不思議。