「トナカイさん、トナカイさ~ん!」
「どうしたのジャンtぐふぅっ!」
オオガミは自分を目掛けて飛び込んできたジャンタをかわすことなど人として出来るわけもなく、鳩尾へと突き刺さったジャンタの頭に悶絶する。
飛び込んだ本人は気付いている様子もなく、困惑している様子で言葉を紡ぐ。
「あのあのっ、イルカを飛ばすおっきい私もそうなんですけど、それ以上に、あの刀を持って黒い炎を飛ばす残念な方のおっきい私はなんでいるんですか!?」
「いや、それは来てくれたから以外に理由はないと思うんだけど……何かあったの?」
「はい! 残念な方のおっきい私に頭をポンポン叩かれました! なんか不気味な笑顔でした!」
「誰の笑顔が不気味だってぇ?」
「うぎゃああぁぁぁぁ!」
ギリギリと音が聞こえそうなくらいに頭を締め付けられているジャンタ。
その状況を引き起こしているのは、件の邪ンヌだった。
そして、邪ンヌが手を離すと同時に崩れ落ちるジャンタ。
「あ、頭がぁ……! 頭がぁ……!」
「レベルと相性を考えるのね」
「バーサーカー相手に有利も何も無いじゃないですかぁ……!」
「じゃ、先制勝ちね」
「一撃必殺ということですか……ガクッ」
そう言って動かなくなるジャンタに、邪ンヌはため息を吐く。
オオガミはそれを見て、
「わざわざ倒れるときに自分で効果音をつけてる辺り、ふざけあってる感じあるよね」
「そう思うなら勝手にどうぞ。ま、私も流石に本気は出さないけども」
「全く……貴女は素直じゃないんですから。お姉ちゃんはもっと素直になってほしいです」
そう言って、ひょっこりと顔を出してきたジャンヌ。
それを見て邪ンヌは嫌そうな顔をして、
「げっ」
「あ、真っ当な方のお姉ちゃんだ」
「いつまでその設定引っ張ってるのよっ!」
反射的に刀を振るう邪ンヌ。
オオガミはそれを寸でのところで回避しつつ、
「危ないなぁ……刀はむやみやたらと振り回しちゃいけないって習わなかったの?」
「それ以前に、平然と回避しないで。自信無くすわ」
「当たったら死ぬんですけど」
「それくらい諦めなさい」
「流石にまだ死ねないって」
そんなやり取りをしていると、後ろから、
「オルタ。お姉ちゃんは悲しいです。お姉ちゃんは弟君に刃物を向けるような子に育てた覚えはありませんよっ」
「そもそも育てられてないんだけど?」
「問答無用です! 今日は朝までたっぷりお説教しますからね!」
「ハッ! お説教!? トナカイさん助けてっ! お説教だけは嫌ですっ!」
「あ、ちょ、リリィあんたずるいわよ! 私だってそいつの後ろに隠れる予定だったのに……!」
「今日という今日は逃がしませんからね!」
「あぁもう! うっとうしい!」
邪ンヌはそう言って、走り去っていくのだった。
今更だけど、ジャンヌ三姉妹は揃ったんですね……二人ほど水着だけど。