「という訳で、新人のイリヤさんでぐはぁ!」
「うひゃぁ!?」
突然飛び蹴りをされて吹き飛んだオオガミに驚くのは、新人ことイリヤ。
そして、オオガミの蹴飛ばした張本人であるエウリュアレに怯えの視線を向ける。
「で、どうやって召喚したのよ。言い訳は聞くわ」
「ふ、ふふふ……魔法の力で330個という暴力の結果よなぁ……ぐふっ」
「明らかにテンションおかしくなってるじゃない。で、もう一人は?」
「召喚できてたらいるに決まってるでしょ言わせないで死にたくなる!」
もはやテンションの変化がおかしくなっているオオガミ。
エウリュアレは一つため息を吐くと、イリヤの方を向き、
「貴女は気にしなくていいわ。だって、いつものことだもの。といっても、しばらくは気にすると思うのだけどね」
「え、あ、はい……もしかして、カルデアって危ないところだったのかな……?」
「あら、そんなことないわ。ちゃんと楽しいところよ?」
背後から突然現れた気配に振り向くと、そこにいたのはアビゲイル。第一再臨の姿ではあるものの、その微笑みはどこか蠱惑的で、且つうっすらと恐怖を感じる。
「えっとぉ……貴女は……?」
「私はアビゲイル。気軽にアビーって呼んで?」
「あ、アビーさん……その、本当にいつもこんな感じなんですか?」
「えぇ。まぁ、エウリュアレさんが言ってるみたいにいつもよりテンションが高い気もするけど。でも、大体いつも通りよ」
「そ、そうなんだ……ど、どうしようルビー。私、危ないところに来ちゃったみたい……」
「何言ってるんですかイリヤさん。このカルデアという場所はネタの宝庫の予感がぷんぷんしますよ! なので前進あるのみです!」
「自分は関係無いからってぇ……!」
楽観的に構えるルビーに声を震わせるイリヤ。
すると、背後から手が伸びてきて、ルビーが掴まれる。
「あら、喋るステッキなんて、面白いものを持っているわね。でも……下手に喋ると、後で痛い目を見ることになるわよ……?」
振り向いてはいけない。それを見てはいけない。脳の中を駆け巡るその警鐘に、イリヤ振り向くことが出来ずにいた。
だが、ルビーはそれを感知できた。出来てしまった。
アビゲイルの背後から覗く無数の触手を。人の精神を踏み潰す異形の存在を。
とはいえ、それは一瞬のこと。威圧感はすぐに消え去り、ルビーを掴んでいた手が離れると同時に振り向くと、そこには微笑むアビゲイルがいた。
「これからもよろしくね、イリヤさん。それと、喋るステッキさんは、技術部に捕まらないようにしてくださいね」
「よ、よろしく、アビーさん……」
「き、肝に命じておきます……」
そうして、一人と一本は、アビゲイルにはあまり逆らわないでおこうと決めるのだった。
ふはは。110連の成果はすり抜け4人とイリヤ二人、美遊礼装二枚で終わったよ美遊本体が来ないんですがぁぁぁぁ!?