「よっしゃぁ! 次は星原だオラー!」
「うきゃあああぁぁぁぁ!!」
「待ってマスター! それ、想像以上に恥ずかしいのよ!?」
「あははっ! イリヤったら、良い気味ね!」
「……私、このメンバーを取りまとめなきゃいけないのかしら……」
雪原を抜け、中立地帯から星原に向けて走っていくオオガミ達。
昨日のアビゲイルの様に強制肩車をされ、悲鳴をあげるイリヤ。
それを見ているクロエはとても楽しそうで、同じく見ているエウリュアレは苦い顔をしていた。
「というか、マシュはどうしたのよ……ああなったのを止めるのはあの子の役目でしょ?」
「姉様。マシュさんなら、さっきエルキドゥさんを呼びに帰りました。防衛はいないので準備が終わり次第そのまま突撃してきます」
「なんでそういう重要な事を早く言わないのよ。よし、今のうちに逃げておきましょ」
「強く生きてくださいね、マスター」
そう言って、二人はオオガミと距離を取り、安全圏から見守るのだった。
* * *
「――――あれ、エウリュアレは?」
「ほぇ? 私はマスターさんに捕まるのに必死だったから分かんないけど……クロ、分かる?」
「え? あぁ、それなら、中立地帯で別れたわよ。アナって子と一緒に」
「……なんか、スッゴイ嫌な予感がするんだけど……」
「ま、マスターさんも……? 私もスッゴイ嫌な予感がするんだけど……具体的には、スッゴイ怖い人が今から来る感じ……」
「あ、私も逃げとこ」
「クロずるいんだけど!! 私も逃げたいのに、何故か必死にマスターさんが阻止してくるんだけど!!」
「一人だけ逃がしたりしないわ!」
「え? ふぎゃっ!!」
颯爽と逃げ出したクロエを即座に門を使って阻止するアビゲイル。
何が起こったのか分からないような顔で左右を見渡し、逃げられなかったことに気付くと、観念したようにその場に座り込む。
「それで、誰が来るのよ。心当たりはあるんでしょ?」
「ん~……え、エルキドゥかなぁ……エウリュアレがあのレベルで逃げるって事は、それくらいしか考えられないかなぁ……」
「……まぁ、私も出来る限り協力するけど、いざとなったらすぐ逃げるからね?」
「大丈夫。捕まったら負けだから!」
「どこら辺が大丈夫なのか分からないんだけど!?」
「それは、捕まったら逃げようがないからじゃないかな?」
「な、なるほど……つまり捕まったら負け――――って、誰?」
イリヤの不思議そうな声とほぼ同時に駆けだすオオガミ。
子供とはいえ、人一人を乗せた状態での全力疾走でもそれなりの速度が出る辺り、スパルタ式の訓練の効果が如実に表れている。が、そもそも、それで逃げ切れるのなら、彼、もしくは彼女は、このカルデアにおいて最強などと呼ばれてはいない。
「全く……マシュからの救助要請だったからとりあえず様子見で来たものの、そうも元気に逃げられると、つい捕まえたくなるじゃないか」
「だって、そんなこと言いながらも毎度全力で捕まえてくるじゃないですか!!」
「そうか……なら、仕方ない。久しぶりの運動に、ちょっと付き合ってもらうよ、マスター」
「援護は任せた!!」
「なんで私たちまで巻き込まれてるのおぉぉぉ!?」
そう言いながら、オオガミを追いかけるエルキドゥを、イリヤたちは攻撃することで援護するのだった。
そろそろ調子に乗り過ぎたのでエルキドゥの登場。
まだだ……まだ呼符があるっ!!!