「まさかもう呼び出しがかかるとは思わなかったよ……」
そう言って、ため息を吐くのはイリヤ。
オオガミはそれに対して苦笑いをしながら、
「まぁ、キャスターでアタッカーとか少ないからね……本当は護法少女でも良いかなって思ったんだけど、回転率欲しいから。どうせ何回か撃つことになるだろうし」
「ん~……全体宝具とかでも良いんじゃないですか? わざわざ単体にする必要もないでしょう」
「体力も多いから、単体の方が良いんだよ。威力重視だよ」
「あらマスター。私は威力がないのかしら」
そう言って現れたのはナーサリー。
頬を膨らませている様子から、大変ご立腹なのだろう。
「いやいや、そう言うわけじゃないんだけど、一撃で倒せないからさ。後押しは必要でしょ」
「むぅ……でも、イリヤなら良いわ! わがまま皇帝やイタズラ皇女じゃないんですもの!」
「あの二人に一体何の恨みが……」
「私から全体宝具を取ったらクリティカルしか残らないのに、とっても強い全体宝具だもの。許せないわ!」
「あ、単体は許すんですかそうですか」
「だって単体の攻撃力は真似できないもの」
そう言ってにこやかに笑うナーサリーに、オオガミとイリヤは苦笑いになる。
「で、でも、ナーサリーさんなら安心できるよ。だって、カルデアに来て一番最初のお友達だし!」
「……アビーは?」
「あ、アビゲイルさんはちょっと……まだ怖いかな……でも、頑張ればお友達になれると思うし、努力中です!」
「エウリュアレはどうかしら。一番仲良くなりやすいと思うの!」
「エウリュアレさんは、友達というよりも……なんだろう。リズみたいな人……かな。あ、リズって言うのはうちの家政婦さんなんですけど、いつもごろごろだらだらしてる仕事をしている方が珍しい人で――――って、ちょっと語りすぎちゃったかも。まぁ、そんな感じの人だと思ってます」
「ふむふむ……つまり駄女神と」
「どうしましょうマスター。この子、正体を見抜いているわ!」
「誰の正体が駄女神よ」
言葉と共にオオガミの頬を掠めていく矢。
その事実を認識した瞬間に、オオガミは本棚を壁にして、
「とりあえず場所はわかってるけど、矢を向けてるのはどうかと思うので下げてくれませんか女神様!」
「あら、矢を向けられるようなことをしたのかしら?」
「逆にしてない可能性があるのに何も聞かないでとりあえず射るわけないので! それに、第一声が殺意こもってたし!」
そう言い合う二人に、イリヤは、
「ねぇ、なんでマスターさんは射たれかけたのに平然としているの……?」
「マスターは人間じゃないかもしれないわ。でも、いつものことだから。アンデルセンも、『あんな喧嘩犬も喰わん。放っておけ』って言うわ。だから、私達は二人が静かになるまで冒険してましょ!」
「えぇ!? 放置して良いの!?」
そう言うイリヤの手を引いて、ナーサリーは図書館の奥へと向かっていくのだった。
最近エウリュアレを自重できなくなってきた……一度どこかで補給せねば……