「……結局出て行かないよね」
「あら、出て行ってほしかったの?」
「別にそう言うわけじゃないけど、寝辛くない?」
作業の手を止めずに聞くオオガミ。
未だに箱の山は崩し終わらず、軽く整理してようやく足場がある程度の状況だった。
なので、エウリュアレはベッドに寝ながら、オオガミを見ている。
「別に、寝るのに支障が無いくらいには片付いてるでしょ。気遣いが出来ているのだから、私は気にしないわ」
「まぁ、いくつかメルトに持って帰ってもらったからね……昨日はギリギリ外に出れるくらいだったし。箱の隙間から見えるけど、そこに行くには至難の業って感じ」
「……アンリはメルトがいたって言ってたけど」
「……そういや、意識してなかったけど、どうやってベッドまで行ったんだろ……メルトがいるのは知ってたけど、片付けるまで足場も無かったような……?」
「ん~……まぁ、あんまり気にしないでおきましょうか」
「別に、気にすることでもないでしょ。うん」
オオガミはそう言って、直後、ふと思い出したように、
「そういえば、昨日帰って来なかったよね」
「あら、帰ってきてほしかったの?」
「まぁ、気になった程度だけども。それで、どこに行ってたの?」
「素直じゃないわね……ノッブの工房に行って遊んでただけよ」
若干拗ねたような口調で言うエウリュアレ。
だが、オオガミは気にした様子も無く、
「なるほど。そっちはゲームしてたわけか。うぅむ、あとでノッブにこっちを手伝ってもらおうかなぁ……」
「向こうは向こうで何か作ってるみたいだったけど?」
「正直、向こうのは後回しでもいいから……対策は結局こっち任せだし。先に手伝ってもらっても良いでしょ」
「そうなの……呼んでくる?」
「いや、まだいいよ。どうせ後で向こうに行くし。エウリュアレはどうする? 今日はもう休む?」
「ん~……そうねぇ……もう少し貴方の作業を見てようかしら。飽きたら寝るわ」
「分かった。じゃあ、もう少しやって、俺も寝るよ」
「えぇ、そうしなさい。貴方は人間で、英霊じゃないんだから。えぇ、そう。貴方は人間……うん。人間だから……よく人外っぽくなってる気がするけど、人間だものね。寝ないとダメよ」
「今、スッゴイ久しぶりに罵倒されてる気がする」
「別に、罵倒したつもりはないのだけど」
「うん。でも、褒められてもいないと思う」
「それはまぁ、確かにそうね」
「否定しないんだね……いや、分かってたけどさ」
そんなことを話しながら、オオガミはしばらく作業を続けるのだった。
あれ……エウリュアレが平然とヒロイン枠に座ってない……?