「あ。オオガミお兄さん! 今日はお菓子はありますか?」
「あぁ、イリヤ。もう少しで焼けるから、周囲に隠れてる危ない奴等に気を付けて待っててね」
そう言って、オーブンに目を向けるオオガミ。
また、忠告を聞いたイリヤは、食堂を見渡し、
「えっと……なんだろう。ここにいたら、後ろから刺されそうな雰囲気なんだけど……」
「残念だったわねイリヤ。最近のマスター特製のお菓子の需要はとっても高いのよ」
「く、クロ!? なにか知ってるの!?」
訳知り顔で現れたクロエに聞くイリヤ。
クロエはとっても楽しそうにしながら、
「それはそう……先日のホワイトデーが原因よ。今までマスターのお菓子に触れもしなかったサーヴァント達が、マスター特製のクッキーを食べたことが全ての始まり……」
「ほ、ホワイトデーのクッキー……確かに、あれはとっても美味しかった……はっ、まさか!」
「そう。不定期に現れるマスター特製のお菓子は、ほぼ全てエウリュアレさんが持っていくからあまり広まらなかった味をマスター自身が広めることにより、一気に需要が跳ね上がってしまったのよ!」
「な、なんですってぇ~!?」
ズガビシャーンッ!! と雷が落ちそうなほど大げさなリアクションをとるイリヤ。
それを見て気分が良くなったのか、クロエは得意気な顔になる。
そんな二人に、オオガミは首をかしげつつ、、
「あれ。不定期だっけ。週一で出してたつもりなんだけど」
「いやいや。イベントとか特異点とか異聞帯とかを攻略している最中は出ないんだから、不定期よ。そもそも、厨房に立ってるのを見かけることが既にレアなのよ?」
「あ~……そういえば、最近はあっち行ったりこっち行ったりで厨房に立ってなかったかぁ……まぁ、それなら確かにレア物だね。うん」
「ほぇ~……あ、そうだ! お兄さん。私たちもお手伝い出来ることはない? 最近はあまりバトルもしてないし、調理実習とか、やってみたいなって。どうかな?」
「ん~……そう言うのはあっちの赤い外套の――――って、逃げたか。ん~……となると……うん。そうだね。キャットがリップに料理を教えてるときがあるから、その時にお願いしにいくと良いよ。お菓子なら多少は教えられるけど、普通の料理は他のメンバーが強いし。あぁ、そうだね。今度ナーサリー達も集めて料理教室でもしてみようか。お菓子しか出来ないからそっち方面になるけど、まぁ、ナーサリーには有益かな」
「え~っと……?」
「あぁ、ごめんごめん。まぁ、要するに、考えておくよ。イベントが来なければ今週中にはしようかな」
「ほ、本当ですか!? ありがとうございます!」
そう言って喜ぶイリヤを見てオオガミは笑みを浮かべつつ、
「じゃ、今回のお菓子はチョコチップカップケーキで。はい。ほしい人は並んでくださいな」
その宣告と同時に、イリヤとクロエを先頭にずらりと並ぶ面々。
その長さに、思わずオオガミは頬を引きつらせるのだった。
さて。そろそろ今日のおやつに被りが出てくるんじゃないかと思う今日この頃。とはいっても、ここまでのを全部覚えているわけじゃないので、既にかぶってる可能性も。うぅむ……