「あれ、エミヤさん、何をしているんですか?」
「あぁ、リップか。いやなに、マスターが料理教室をすると言っててな。その手伝いをな。裏方だが、いないと大変だろう」
荷物を運びつつ答えるエミヤ。
リップは首をかしげつつ、
「教えるなら、あなたの方が良いんじゃないですか? マスターだけだとダメなんじゃ……」
「いや、そうでもないさ。事前に手順の説明をしている。私がいなくても問題なかろうさ」
「そうでしょうか……あなたがいないとダメな気もするんですけど……いいえ、マスターですし、大丈夫ですよね。子供が怖くて怯えてる赤い外套の人とかいなくても大丈夫でしょうし」
「別に怯えてなどいない。ただ、苦手なのがいるだけだ」
「でも、逃げたのは変わらないんですよね? まぁ、何でもいいですけど。私も混ざってきますね」
「あぁ、そうしたまえ。私は裏にいるからな」
去って行くリップを見送りつつ、エミヤは準備を続ける。
そんなエミヤに忍び寄っていたロビンは、
「オタクも大変そうだねぇ。いやぁ、オレは昨日頑張りましたし? アンタも苦労してくれねぇと割に合わねぇって感じだ。頑張れよ赤いの」
「ふん。貴様か。嫌味を言うためだけに来るとはな……全く、今日は厄日だ」
ため息を吐くエミヤに、ロビンは考える様な素振りをしながら、
「厄日ねぇ……なんかあったんですかい?」
「貴様、聞く気は無いだろう? マスターの補助に行くなら食堂に行くといい」
「いやいや。オレは別にマスターの世話をしに行くんじゃないんですけどね? なんだかんだ、リップに引きづり回されてるっつうか? まぁ、そんな感じなだけで、オレはあんまり行きたくないんで。そこは理解してもらえればっつうか、察しろとしか」
「そうか。あいにくと、察する気は無いのでな。それと、食堂に行くならこれを持って行け」
「おぅおぅ。アンタも人使いが荒いねぇ……ま、これくらいはしておきますよ。んじゃ、頑張れよ」
そう言って去って行くロビン。
持って行くものも無くなったエミヤは、何をしようかと考え、
「仕方あるまい。マスターの部屋を掃除しておくとしよう。食堂前を通ると鉢合わせるかもしれないからな……遠回りで行くとするか」
「あぁ、それならあちらから行くと良い。行くまでの間、少し話に付き合ってもらってもいいかな?」
突然現れたエルキドゥにエミヤは面を食らうものの、すぐに気を取り直すと、
「あぁ、そのくらいなら構わんよ。では、行くとしようか」
そう言って、エルキドゥと一緒に歩き始めるのだった。
久しぶりのエルキドゥ。とはいえ、リップの被虐体質って、これでいいのかなぁと思いつつ。早く原作をやらねば……