「ふむ。珍しいこともあるもんじゃな」
「そうですねぇ……まぁ、自爆らしいですし、映像記録だけ残しておいてあげるとします」
そう言ってビデオカメラを構えるBBと、ニヤニヤと笑うノッブの視線の先には、キャットに見張られてクッキーを作らされているエウリュアレがいた。
そして、当然のように隣で手伝っているのはオオガミ。キャットが見張っているだけなのは、主にそれが理由だった。
「……なんでこんな目に遭っているのかしら」
「自業自得としか……というか、よく大人しく従ったね」
「そんなわけないでしょ。抵抗したわよ。でも、キャットだけならまだしも、エルキドゥは無理よ。そんな強力なの呼ばれたら私じゃ無理」
「あ~……確かにそれは無理だね……」
「えぇ。だから、仕方なくよ。ちなみに、貴方がそこにいるのは私が出した条件だからよ。諦めて手伝いなさい」
「なんとなくそんな気はしてた。というか、あそこの二人は巻き込まなくて良かったの?」
「あっちはまた別の報復をするわ。最近全くイタズラをしてないもの。盛大にやってやるわ」
「手加減……は、しないよね。うん。分かってる」
ムッとした表情で、既に怒っていることは分かりきっていた。
なので、オオガミは特に止めることはなく、
「まぁ、死なない程度には手加減してあげてよ」
「殺したらイタズラじゃないわよ……でも、泣かすくらいのはやって見せるわ」
「……あの二人が泣くくらいの事かぁ……ふむ。ちょっと興味出てきた」
果たして何をするつもりなのかとちょっと楽しみになってきたオオガミ。
ただ、流石にイタズラの内容は教えてくれないだろうと思い、決行時間だけ聞いておこうとする。
「何時やるの?」
「ん~……決めてはあるけど、教えないわ。ただ、何をしたかはすぐに分かるんじゃないかしら。あぁ、でも、あんまり効果無いかも。どうしよう、泣かせることが出来るかしら」
「……まぁ、エウリュアレが楽しそうでよかったよ」
そう言って、クッキー生地を伸ばしているエウリュアレの隣にクッキーの型を用意するオオガミ。
なんだかんだ文句を言いつつも、ほとんどはエウリュアレが作り、オオガミは道具を用意したり仕上がりを確認したりするだけだった。
「不思議ね。なんで私がこんなことをしているのかしら」
「そりゃ、イベント開始前にやらかしちゃったからじゃないかな」
「私、そんな悪いことしたかしら……」
「そんな悪いことでもないような気がするけどねぇ……まぁ、次からはお菓子作りの手伝いを『出来ない』で断れなくなったくらいじゃない?」
「……! まさか、断れなくなるようにそうしたのかしら……!?」
「キャットは絶対そんなこと考えてないと思うよ……」
衝撃の事実かの如く目を見開いてるエウリュアレに、オオガミはなんとも言えない表情になるのだった。
いつかの約束は守られるのだった……
なお、エウリュアレの報復処置は滞りなく行われる模様。