「ちょっと……なんでその人がいるんですか。メルトとエウリュアレさんだけだと思ってたんですけど」
「BB……色々突っ込みたいことがあるけど、まずはなんで畳の下から出てきたのかを聞いておこう」
マイルームにて、突然持ち上がった畳から顔だけ出してこちらを睨んでいるBBに対して、オオガミは首をかしげつつ聞く。
「あれ、センパイ聞いてないんでしたっけ。例のアレの試運転を兼ねてここと工房を繋げる計画があったんですよ。あ、ちなみにこれは出る専用なのでここからは入れないですよ」
「逃走経路にここを巻き込むな……!」
「この部屋、ただでさえも魔境だったのに、さらにおかしくなっていくわね」
「そうねぇ……最初はもっと大人しかったのにね。不思議だわ」
「ここ、本当に大丈夫なんですか……? 逆召喚した私が言うのもなんですが、奇跡的に成り立ってますよね、ここ……」
遠い目をするメルトとエウリュアレに、不安そうな顔になるカーマ。
ただ、マイルームが魔境と言うのは今に始まったことではないだろう。
「それで、BBは何をしに来たの?」
「あぁ、そうですそうです。最近アビーさんが工房に入り浸ってノッブと遊んでるせいで作業が進まないので連れてって貰えません?」
「あ~……確かにそれは問題だね。アビーの教育上良くないや」
「ちょっと行って連れてくるわね」
「うん、お願い」
すぐに部屋を出ていくエウリュアレを見送る四人。
BBは不思議そうに、
「エウリュアレさんで良かったんです? そこの二人は無理だとしても、センパイが行った方が早いんじゃ?」
「いやいや、エウリュアレの方が良いよ。アビーの説得なら、基本エウリュアレがよくやってるし、得意だろうから」
「そ、そうですか……まぁ、センパイがそれで良いと言うなら良いんですけど……あ、とりあえず、試運転は成功なので、機体の耐久テストをしておきますね。脆かったら意味ないので」
「最終的には倉庫に実装予定だしねぇ……アヴィケブロン先生のゴーレム以上の耐久はないとね」
「ゴーレムに負けてたまりますか! 絶対勝ちますからね!」
そう言って闘志を燃やすBBを見ながら、メルトは、
「でも、たぶん最後の最後で盛大にやらかしてしまうんじゃないかしら。BBならあり得るわ」
「あ~……緻密に計画してもちょっとした目測の誤りで台無しにするタイプですか……残念な人ですね」
メルトの発言に同意するカーマ。
それは特大のブーメランにも思えるが、幸いなのか、ここにそれを指摘する者はいないのだった。
既にマイルームに入り浸っているカーマ。
でもきっとそのうち忘れられる……