「はぁ……先輩は帰ってきませんし、アビーさんも行ってしまいましたし……やることがないです」
「むっ。
食堂にマシュが入るなり、椅子に座ったまま声をかけてくるバラキー。
ちなみに、バラキーの対面にはカーマが座っており、持っているケーキを渡しはしないという意思を感じる眼をマシュに向けていた。
「茨木さん……先輩が帰ってこないので、ちょっと気が抜けてる感じです。資源はそんなに増えてないので、整理する事もありませんし」
「ふむ……ならば、しばし付き合ってもらおうか。もちろんカーマも一緒にな」
「え、嫌ですけど。なんで従わなくちゃいけないんですか」
「まぁそう急くでない。吾にも考えはある。汝はパールヴァティーを貶めたい。吾は暴れたい。そして魔酒も暴れたい。ならば、答えは簡単だ」
「全く関連性が見えないんですけど」
「あの、別に私は暴れたいわけではないのですが……」
バラキーの言葉に二人から突っ込みが入る。
が、バラキーは特に気にすることもなく、
「カーマに良い噂が立つということは、間接的にパールヴァティーを貶めることになるはずだ。カーマが目立ち、パールヴァティーはそのうち忘れられる……忘れられるのはわりと辛い。うむ。吾にも経験ある。そして、良い噂が立つためにすることと言えば、とりあえず暴れているのを倒す! これが一番だ!」
「凄いです。全くダメージを与えられる気がしないのにそんなに自信満々に言われると変な説得力ありますね」
「そう言うのはエルキドゥさんが日々やっているような……いえ、良いですが。ただ、それが茨木さんの口から出たのが驚きです」
最もらしい、しかしあまり関連性のない言葉に、変に納得する二人。
そして、
「まぁ、特に予定もないですし、その案に乗ってあげます。感謝してくださいね」
「エルキドゥさんの休憩にも繋がるでしょうし、私も手伝いますね。それで、あてはあるんですか?」
仕方ないとばかりに、最後の一口を食べて立ち上がるカーマと、盾を準備するマシュ。
それに対して、バラキーは自信満々に、
「決まっている。あの恐ろしき子どもの国だ! つい先日解体されそうになったからな。今こそ反撃の時! 行くぞ! 新生大江山盗賊団出撃ぃ!」
「ていっ」
「ふっ」
今まさに突撃しようとしたバラキーの足はカーマに射抜かれ、そのダメージで下がった頭に重い盾の一撃が突き刺さる。
「な、なぜだぁ……」
「無用な敵は増やしたくないので」
「流石に彼女達に挑むのは無理があるので……ジャックさんに一方的にやられて終わるかと」
「そ、そんな……がくっ」
そう言って気を失ったバラキーを、二人は医務室へと連れていくのだった。
新生大江山盗賊団。仲間の反乱により数秒で壊滅した模様。
しかし、イベントが本当に終わらない……終わるのだろうかこれ……やっぱりリンゴ必須……?