「うぅ……やっと帰って来れたぁ……」
「イリヤ……っ!」
部屋に帰って来るなり、倒れるイリヤを支えに行く美遊。
クロエはそれを見て、
「随分とボロボロね……何があったの?」
「それはもう、壮絶な戦いでした……あ、録画しているので見ます?」
そう言って、イリヤの影から現れるルビー。
それに対してサファイアが、
「姉さん……また余計な事をしてませんか?」
「酷いッ! 私がそんな事をするとでも!? ちゃんと健全に録画しましたとも!」
「そう言う事が聞きたいんじゃないと思うんだけどなぁ……」
「そうです。みなさんに迷惑をかけてたりしないか心配で……」
「も~。サファイアちゃんは心配性なんですから。ちゃんと敵に嫌がらせの限りをしてきましたとも!」
「下手に活躍してきたって言われるより説得力があるのは何でかしらね……」
苦笑いで言うクロエに、同意するように動くサファイア。
それに対してルビーは、やれやれと言いたげに動くと、
「クロエさんは一言多いと思いますよ? 論より証拠。ささ。上映しちゃいましょう」
「うん。イリヤの活躍、この目に焼き付けないと」
「えっ、ちょ、ルビーダメぇ!! あんなの見せられないからぁ!!」
そう言って今まさに上映を始めようとするルビーを止めようとするイリヤ。しかし、
「って、あれ!? 美遊!? なんで止めるの!?」
「たとえイリヤでも、今だけはルビーの邪魔はさせない……それに、私の意志で一緒に戦えるわけじゃないから、せめてイリヤの活躍を見たい」
「あぅ……そんな真っ直ぐな目で見られるととっても困るんだけど……で、でも。やっぱりアレは人に見せられるものじゃないし……うぅ、どうすれば……」
「なんてイリヤさんが悩んでる間に上映準備完了! 初戦から決着までのベストシーンを切り取ってのここにしかない完全版! 休憩中のイリヤさんのあんな姿やこんな姿も見れるかも!? 始まり始まり!」
「題名からして嫌な予感しかしないんだけどぉ!?」
明らかに何かを企んでいるであろうルビーに嫌な予感を感じたイリヤが阻止しようとするも、美遊の妨害によってそれも出来ず、上映会は始まるのだった。
* * *
「ブラックじゃない。よく生き残れたわね」
「酷い……マスターに抗議してこなきゃ……」
「美遊の目が怖いんだけど!! 待って美遊! 今行ったら帰って来れなくなりそうだから待って!?」
必死の形相で美遊を止めるイリヤ。
ひたすらに魔神柱を破壊し続ける戦いに、だんだんと目の色を失っていき、イリヤがテスタメント・フォームになった辺りで越えてはいけない一線を越えたかのような雰囲気を感じたイリヤ。
どうにかして美遊を落ち着かせたイリヤは、
「だ、大丈夫だから。次は無い……と、思うから、安心して?」
「……次があったら、その時は私もついて行く」
「えっ」
「そうしたら、安心できるから」
「えっ」
「そうね。美遊がいるなら安心じゃない。その時は私もついて行くけど」
「おぉっ! 久しぶりに魔法少女全員出動ですね! その時を楽しみに待っているとしましょう!」
困惑するイリヤを置いて決定してしまう魔法少女部隊。
とはいえ、逆の立場なら自分も同じことをする可能性があるので、そこまで強く否定できないのが困ったところだった。
オオガミ君の知らない所で修羅場は起こるさ。背後に気を付けないと唐突に刺されそうだな……
久しぶりに三人同時に出せて満足……