「で、どうしてこうなってるの?」
「私は止めたわ。結果は見ての通りだけど」
そういうエウリュアレとアビゲイルの視線の先にいるのは、子どもサーヴァントに身動きを封じられたオオガミ。
血が足りなくて寝ているところに襲撃され、しかもそのまま全員寝ているので、ピクリとも動けない状況だった。
「……明後日にはイベントが終わるから、たぶんそのあとなら一週間くらい遊べるよって言ったらこうなった」
「懐かれてるのね」
「でも、私が飛び付く場所が無くなっちゃったわ」
「どさくさに紛れて何言ってるのこの子は」
うずうずとしているアビゲイルに、思わず突っ込むエウリュアレ。
とはいえ、エウリュアレも同じ事を思っていたりするのだが、わざわざ突撃するほどではないのだ。
「というか、メルトさんは? 一緒じゃないの?」
「あぁ……メルトは周回よ。アサシン相手だし、問題ないとは思うけどね。指揮は孔明だし、大丈夫じゃないかしら」
「前線に出なくても、後方で戦うことになるのね……公明さん、休める日は来るのかしら」
「さぁ? イベントが終わったらじゃないかしら。暇な時間はスカディと巌窟王がメインだもの」
「そう……私、マーリンさんが戦ってるの、滅多に見ないのだけど」
「それはそうよ。だって、周回には向かないもの。高難易度向けよ」
「そうなの?」
「そこで埋まってるのがよく知ってるわ」
「……トゲがあるんですが、何でだろ……」
やっぱり抜け出すだけの体力はないのか、動かずに話すオオガミ。
エウリュアレはやれやれと首を振ると、
「別にそんなの無いわよ。で、起きたいの? それとも寝てるの?」
「お腹空いたので起きたいんですが……」
「分かったわ。じゃ、アビーお願いね」
「そこで私に振るのね……」
そう言って、渋々と門を開くアビゲイル。
全員送ったのを確認した後、エウリュアレは、
「何を食べるの。持ってくるわよ」
「普通に食堂に行くから……」
「そう。じゃあ――――」
「そんなセンパイにプレゼントー!」
突然壁に開かれた門から飛び出てくるBB。
そして、そんな彼女が押しているのは、どう見ても車椅子だった。
「いやぁ、ギリギリ間に合いましたね。センパイが食堂に行く前に完成させられて良かったです!」
「何しに来たのよ」
「いやいや、エウリュアレさん。どうしたも何も、今まさにエウリュアレさんがその肩を貸して食堂に向かうと言う、オトコノコ的に致命傷な行為をする前にBBちゃんが助けに来た次第です! ささ! 早く座ってください!」
「嫌な予感しかしないけど……まぁ、座るしかない……」
そう言って、ふらふらしつつもなんとか座るオオガミ。
しかし、だ。果たして誰がその車椅子を押すのか。そこまでは意識が回らなかったオオガミは、その代償を即座に払うことになる。
「じゃあ、飛ばしますよぉ!」
「えっ、ちょ、速いんだけどぉ!?」
急加速急旋回。息を吐かせる間も無くオオガミを連れ去るBB。
その一部始終をポカンとした顔で見送った二人は、すぐに我に帰ると、急いで追いかけるのだった。
展開に困ったらBBを出せばお茶を濁せると思っているのが私です。この暴走は、誰にも止められない……(制御不能