「おはよう、マスター」
「……おはよう。メルトは?」
目を覚ますと、紫髪の少女がそこにいた。
メルトの姿が見えないので不思議に思い聞くと、
「えっと……たしか、食堂に行ってくると言ってました」
「そう……なら心配ないかな。さて、ステンノ様。今日は何をしに来たの?」
「あら、面白くない人。何時から気付いていたの?」
紫髪の少女もとい、ステンノは不機嫌そうにそういう。
「何時からって聞かれても、最初から、としか。雰囲気が違いますし」
「そう……ところで、ずっと疑問だったのだけど、どうして私には敬語なのかしら。私、ちょっぴり傷付いてるわ」
「なぜ……なぜか……うぅむ、あんまり気にしてなかったから、それと言った理由はないんですけど……」
「あら。じゃあ、敬語じゃなくなっても問題ないわね。そうしましょう。いえ、そうしなさい」
「ずいぶんと横暴な……いや、何でもないです」
ステンノに笑顔のまま睨まれ、目を逸らすオオガミ。
器用なことをするなぁ。なんて思いつつ、
「というか、本当に何をしに来たの?」
「あら、そうだったわ。気付いたのなら教えてあげなくちゃよね。これは
「なんだか嫌な予感しかしないけど、行くしかないんだよね。分かってる。よし、行こう」
オオガミはそう言うと、ステンノと一緒に食堂へ向かうのだった。
* * *
「「あらマスター。おはよう」」
「……おはようエウリュアレ。なんだか二人に見えるね?」
食堂にたどり着くと、なぜか二人いるエウリュアレ。
遠くでアンリが笑っていることから、少なくとも片方は偽物であることがわかる。
「二人に見えるというか、事実二人なのだけど、そうね。どっちかが新シンよ。さぁ、どっちかしら」
「前にも似たようなことがあった気がするんだけどなぁ……気のせいじゃないよなぁ……」
「ほら、早く答えを言いなさい。ふふっ。ちゃんと当てられるか楽しみだわ」
そう言って笑う二人のエウリュアレ。
ぼんやりと周囲を見渡すと、メルトにアビゲイルとロビンさん、ジャックとジャンタとバニヤンに、アンリ。
そして、最後に二人のエウリュアレに視線を戻し、
「右が新シンさんで、左がナーサリー。で、エウリュアレはたぶんアビーの後ろ辺りじゃないかな。最初から一緒にいた可能性も無くはないけど、たぶん低いと思う」
そう言って、二人のエウリュアレを見るオオガミ。
すると、二人とも苦笑いになると、
「正解だ。見破られないと思ったんだけどなぁ……」
「残念だわ。マスターを騙せると思ったのに。やっぱり、エウリュアレさんには勝てないみたいよ」
「いや、正直ロビンさんがいてくれなかったらちょっと分かんなかった。だってほら、ロビンさんがマント持ってないからさ……」
オオガミがそう言うと、全員一斉にロビンを見て、
「そう……やっぱり追い出しておくべきだったわね」
そう言って、アビゲイルの隣に現れるエウリュアレ。
ロビンは顔をひきつらせると、
「あれあれ? ちょっと待て。何これ、オレが悪い感じ? マジで? 宝具まで貸したのにか。ウルトラ運がねぇじゃねぇか……!」
「総員、捕獲!」
エウリュアレの号令と共に拘束されるロビン。
オオガミはその光景を見つつ、隣のステンノに、
「で、なんでこんなことを?」
「あら、知らないの? 少し前にあった虚月館みたいなイベントが来るって聞いて、みんなで準備したのよ。すぐに見破られたけど。準備期間は短かったし、仕方ないかもしれないけど」
「あぁ……謎解きイベント……なるほどね」
オオガミそう言って、一人納得するのだった。
謎解きイベントですってよ奥さん。私、前回醜態を晒したので今回は黙っといた方が賢明なんじゃないですかね?
でもしゃべっちゃう! 私ですから!