「うわその目こわっ」
「私は悲しい……目を見開いただけで怖がられてしまった……」
ポロロン。と響く琴の音色。
一瞬だけ開けられた目に思わず声を出してしまったオオガミだが、敵としてなら何度か開けられた目を見ていたような気がするな、と思い、少し反省する。
「しかし、迫真の演技だったね。さすがトリ。メルトに褒められるだけはあるよね」
「どうしてでしょう。褒められているような気もしますが、それ以上にマスターの目が怖いような……」
「いやいやそんなこと無いって。まぁまぁ。闇打ちはしないから」
「とても不安でしかない……」
再び、ポロロン。と響く音。
そんなところにやって来たメルトは、
「マスター、エウリュアレに呼ばれてきたのだけど……どうやらトリと話してたみたいね。邪魔したのなら帰るわ」
「エウリュアレに呼ばれてって、どういうことなの……?」
「知らないわよ。久しぶりに一人だから遊んでたのに、急に呼び出されてきたのよ? しかも、来たらトリと話してるし、訳が分からないわ」
「な、なんかごめん……とりあえず、呼び出した張本人であるエウリュアレに文句を言いに行くしかないかな。じゃあねトリ! 次も迫真の開眼、よろしく!」
「演技ではなく開眼を要求されるとは思いませんでした……」
そう言って、本日三度目のポロロンを聞きながらその場を離れるオオガミとメルトなのだった。
* * *
「呼んだ理由? そうそう。ウノをやってみようと思って。あんまりカードゲームで遊んだこと無いし、良いかなって。どう? やらない?」
「……そうね。ちょうど退屈してたし、いい機会だわ。やるとしましょう」
「まぁ、今は休憩時間だしね。次の撮影までなら遊ぶよ」
そう言って、輪の中に入るオオガミ達。
エウリュアレ以外にも、アビゲイルと邪ンヌがいた。
すると、アビゲイルが、
「あら、マスターは撮影開始前にマシュさんが立ち回りの説明をするって言ってたわ。アドリブなのだし、頑張ってねマスター」
「ありがとうアビー。殺されない程度に頑張るよ……」
オオガミはそう言って、ぐっと親指を立てる。
エウリュアレはため息を吐きつつ、
「それにしても、即興とは思えない完成度ね。実は最初から想定してたんじゃないの? 作家さん?」
「バカ。あんな大手が書き上げるのよ? 演じられるってだけでもビックリよ。代筆とか、考えるわけ無いでしょ」
「まぁ、そうよねぇ……でも、うまく出来てると思うわ。今のところは。名探偵の流れはちょっと張り切りすぎてた気もするけど」
「私もそう思うけど、何しろこっちは素人。演じるなんて縁の無かった連中ばっかりよ。我が強いのがほとんどなのに、よくここまで何もないって思うわ。本当、不気味なくらいにね」
そう言って、ずっとシャッフルしていたカードを置く邪ンヌ。
「それで、ルールは?」
「さっきBBから聞いたルールで良いかと思ってるわ。ドローの連鎖で大量のカードを引くマスターを見てみたいもの」
「おっと。エウリュアレの目が怖いぞぅ……?」
そう言いながら、エウリュアレは全員にカードを七枚配るのだった。
トリ……お前、目を開ける時って、平和回の時は基本笑わせに来るよね……でも見た目がかっこいいのが悔しい……中身はアレなのに……
あ、私はトリのこと、スッゴい苦手です。6章とCCCの時の苦しみは忘れない……