「明日、開催するから、準備をしておくんじゃよ。エリザ」
「は、早くない? いえ、いつでもいいように準備してるけど、集まるかしら……」
「チケットをもらえばすぐにでもバラ撒いてきますけど。まぁ、行く行かないの意思とか関係無く強引に引きずり出すんですけど」
「暴君の二人が言うと説得力の塊だよね」
悪い顔をして笑うノッブとBBに挟まれてプルプルと震えているエリザベート。
そんな三人を苦笑いで見ていたオオガミは、隣から脇腹をつつかれる。
「な、何するんだよエウリュアレ……」
「なんとなくよ。つつきやすい脇腹があったら、ちょっとつついてみたくなっちゃうのは仕方のないことだと思うの」
「とんでも理論だね? でも、やり返すとセクハラ扱いなんでしょ?」
「そうね。私以外はセクハラ扱いで縛り首じゃない?」
「おっと。完全に死ぬねそれは――――って、うん? 今、ちょっと変じゃなかった?」
「気のせいじゃない?」
エウリュアレはそう言って、カルデアから持ってきた椅子にオオガミを座らせ、その膝の上に座る。
「……今日は機嫌が良いね?」
「そうね。指摘しなかったらもっと機嫌がよかったと思うわ」
「そ、そう……そういえば、メルトは? 一緒に来たって聞いたけど」
「防衛の方に行ったわ。メルトじゃ不利だって言ったけど、『それはそれ』って言われちゃったら、止めるわけにもいかないでしょ?」
「いや、止めようよそこは。適当なところで帰ってくるとは思うけどさ?」
「なら尚更止める必要ないじゃない。勝手に帰ってくるんだもの」
「なにその、子犬みたいな扱い……本人に聞かれたら殺される気がする……」
「大丈夫よ。被害に遭うのは貴方だもの」
「なるほどね? 自分は問題ないからいいと。泣くよ?」
「ふふっ。そのときは目の前で泣いてね?」
「今日は珍しく毒気が強いね? 何かいいことでもあったの?」
そう聞くオオガミに、しかしエウリュアレはにっこりと笑って答えない。
それでなんとなく何かがあったのであろう事を察するが、問題は、その何があったかがわからないというところだった。
「……まぁ、いいや。で、エリちゃんのライブって、どのくらい広まってるの?」
「あなた達がキャメロットに行ったときからやるんじゃないかって一瞬で広まったわよ。えぇ、面白いくらいに。だから、チケットを配ればみんな来るんじゃないかしら。なんせ、あなたがいるもの」
「雑な理由だね? まぁ、来てくれるならいいけどさ」
オオガミはそう言って、明日無事開催されるのを祈るのだった。
はい。書いてて再確認しました。この作品のメインヒロインはエウリュアレです。メルトをあんなに欲してたのに、結局エウリュアレの使いやすさがすごい。これはダメだ。沼る。メルトの出番、エウリュアレに奪われちった……