「ねぇマスター。昨日って、なんの日だったか知ってるかしら?」
「昨日……? ん~……なんかあったっけ」
エウリュアレに言われ、首をかしげるオオガミ。
しかし、特に思い至るものはなく、
「なんかあったっけ?」
「そう……やっぱり知らないのね。恋人の日なんだって。なにかないの?」
「……いや、別に何もないけど……」
言った直後、足を思いっきり踏まれる。
その痛みに反射的にうずくまるオオガミの肩に体重をかけるエウリュアレ。
「そう……何もないのね。というか、あなた、わりとイベントをスルーしすぎじゃないかしら。特に、出身国のイベントを。もっと大切にしなさいな」
「い、いや……そもそも知らないのだから是非もないと思う……マイナーイベントの部類だと思うのですが……!」
「それでも気にかけるのが日本人って聞いたのだけど。イベントいっぱいじゃない」
「それ、毎日誰かの誕生日ってくらい、どうでもいいものの部類の気もする……身近なことじゃないと知らないことって、結構あるんだよ? 特に、恋人の日とか、今までなら、というか、今でもあんまり関係ないと思うんだけど……」
「へぇ、そう……そういうのね? 良いわ。やっちゃってアビー」
エウリュアレはさりげなく距離を取り、そういうと、オオガミの真上からアビゲイルが降ってくる。
「てーい!」
「えっ、ちょ、ふぐぁ!」
かわすことは物理的に可能でも精神的に不可能なので、慌てて受け止めようとするも、失敗して下敷きになるオオガミ。
潰した方であるアビゲイルはどこか満足そうで、
「ふふん! 久しぶりにマスターに飛びかかったわ! しかも、今回はエウリュアレさんに言われてやったから、お叱りは無しね!」
「そうね。ついでに締め上げても良いわ」
「そ、そこまではしないわ……そこまですると、今度はマシュさんが怒りそうだもの……」
「資源を勝手に使っていたから叱ったって言えば、すむ気もするけどね?」
「……もしや、エウリュアレさん、相当怒ってます?」
「いいえ? そんなこと、これっぽっちもないけれど?」
「めっちゃ怒ってるじゃないですか……!!」
不気味なほどに良い笑みを浮かべているエウリュアレを見て、半泣きになるオオガミ。
昨日はしゃぎすぎたので罰が下ったのだろうかと思いつつ、
「何が望みなんだエウリュアレ……!」
「え? あ、あぁ~……そう……ね……どうしよう。なんにも考えてなかったわ」
「盛大にやられ損なのでは!?」
「それはそれ。これはこれよ。構わなかったのが悪いわ」
「え、えぇ~……」
納得いかないオオガミ。しかし、アビゲイルを退かすことも出来ないので、エウリュアレが何か思い付くまでこのままだった。
そして、
「じゃあ、今日は私が寝るまで膝枕をすることで許してあげるわ」
「徹夜コースですねわかります……!」
だが、それ以外の選択肢がないオオガミは、にっこりと微笑むエウリュアレの案を、承諾するしかないのだった。
なお、私が知ったのは今日ツイッター開いてから知ったので、昨日の投稿後のことである。