今更になって怒られたよ(お久しぶりですねマスター)
「いや~っははは……そろそろこの状況にも慣れてきたよ」
「あらあら。お久しぶりですマスター。今度はどのようなことで捕まったのでございましょう」
もはやいつものように、平然と牢屋に投げ込まれるオオガミ。
なんでこんな部屋を設けているのか気になるところではあるが、有効活用されているのだから問題ないのだろう。
それはもちろん、現在正面で微笑んでいるキアラのための牢屋ではあるのだが。
「まぁ、うん。いつも通りのやつだよ。マシュに怒られたので、ポイッと」
「なるほど。そうでございましたか……まぁ、おはぎでも食べておくつろぎくださいませ」
「……ヨモツヘグイとか無いよね?」
「ここは黄泉ではありませんし、そもそもこれは食堂から少々拝借したもので作りましたので、ありません。ただ、マスターが自らここに戻ってくるのは止められません。けれど、マスターがここに来てくだされば、こうしてお話ができるので、私としては願ってもないことですね」
「……まぁ、うん。流石に洗脳はされないと思うし、されてもエウリュアレがどうにかしてくれるだろうから良いけどさ……おはぎ、いただきます」
「えぇ、どうぞ。時間はたっぷりありますので、ゆっくり食べてくださいね」
ふふふ。と微笑むキアラを横目に、キアラ特製のおはぎを一口食べるオオガミ。
「……バレンタインの時もそうだったけど、キアラさんのおはぎって、普通に美味しいよね。うぅむ、食堂に置いても良いのでは……?」
「それはその、なんと言いますか……皆さんが納得してくださらないので、無理かと。それに、これはマスターにと思って作っていたので、数を作る予定はありませんので」
「むむむ。じゃあしょうがないね。この美味しいおはぎは今のところ独占な訳だ」
「そうですね。そういうことでございます。ふふ。独占するのではなく、独占されるだなんて……不思議な気分ではありますが、存外、悪いものではありませんね」
そう言って気恥ずかしげにするキアラに、何とも言えない表情を返すオオガミ。
「そういえば、キアラさんって、ここに閉じ込められてるのに、物はわりと充実してるよね……どこから取ってるの?」
「そうですね……スキルで取りに行くときもありますが、ここはその、BBが無害な失敗作を投げ入れてくるので、自然とたまっていくと言いますか……おかげで生活するのになんら苦ではないのですが、失敗作がたまっているので、危険は多くなってきているのですよね……」
「だ、大丈夫? 爆発しない?」
「えぇ、大丈夫ですよ。危険なものはあらかた片付けましたので。おそらく、マスターがいる間はBBも余計なものは投げ入れないと思いますし、もし入れられても対処するので安心してください」
「なんか、スッゴい頼もしい……」
聖母のように微笑むキアラに、オオガミは感嘆の声をあげるのだった。
キアラさん、こんなキャラでしたっけ……なんか、スゴいほのぼのしてる……