「海に入らなくても、水上の遊びなら参加できるわよね。水上バイクとか」
「でも貴女騎乗スキルないじゃない。更に言えば、私は乗り物にはあんまり乗れないから」
「騎乗スキル持ちながら何を言っているのかしら」
そう言いながら、桟橋でボートを見るエウリュアレとメルト。
運転できなければ借りる意味がないので、誰か良さそうなのはいないだろうかと見ていた。
そんな時だった。
「あら、ごきげんよう。今日はメイドの仕事は無いのかしら」
「むっ。貴様は……エウリュアレか。どうした。今日はマスターは一緒ではないようだが」
「いつも一緒にいるってわけじゃないわよ。サバフェスで会うもの。問題ないわ」
「ほぅ? 珍しいな。どちらかを探せば自然と二人でいるものだから、そう言うものだと思っていた」
「……最近、否定するのも面倒になって来たわ」
「諦めなさいよ。もう二人で一人なのは事実なんだから」
「それを認めたら負けな気がするの。だから最後まで抗うわ」
「一体何と戦ってるのよ貴女は……」
呆れたようにため息を吐くメルトに、エウリュアレは頬を膨らませる。
そんな二人を見ながらメイドオルタは、
「それで? 何用だったんだ。声をかけただけとは言うまいな?」
「あら。声をかけただけというのはダメなのかしら」
「いや、そういうわけではないが、貴様に限ってそのようなことはない、と思っているからな」
「イヤな信頼ね。まぁ、あってはいるのだけど」
「そうだろう? ほら、さっさと用件を話せ」
「その言い分がとっても気に入らないけど、そうね。私たちはちょっと海に出たかったの。海岸でもいいけど、ちょっと遠くまで出るのも面白そうかなって。それで運転手を探してたの。お願いできるかしら」
エウリュアレの話を聞き、メイドオルタは少し悩んだあと、
「ふむ。人を雇うのだ。それなりの報酬はあるんだろうな」
「ん~……昼食をバーガーとかどうかしら。もちろん奢りで」
「良いだろう、その条件で成立だ。ただし、私の運転は少し荒い。振り落とされるなよ?」
「えぇ、もちろん。あ、それと、水上スキーって出来るのかしら。あぁ、興味本意で聞いただけだから、出来ないならそれでいいのだけど」
「それなら出来る。が、エウリュアレはともかく、メルトのそのヒールでは難しいと思うが良いのか?」
「あら。沈む気なんてサラサラ無いのだけど。白鳥が海に溺れるだなんて滑稽なことするはずもないでしょ?」
「……まぁ、貴様がそう言うのなら私は構わんが、後悔しても知らんぞ」
「大丈夫。エウリュアレはどうしようもないかもしれないけど、私は何とか浜辺まで帰れるもの」
「そうか。なら、問題ないな。なら乗れ。すぐ出発だ」
そう言って、二人がボートに乗るのを待ってから、メイドオルタはボートを出すのだった。
メイドオルタってこんな感じでしたっけ。ちょっとキツイ性格にし過ぎた……?
ちなみに、個人的にエウリュアレはオオガミ君と離れてる期間が長くなるほど機嫌が悪くなりやすくなると良いなぁって思ってたり。この設定が生きるかは分からないですけど。