「さて。じゃあ鬼の説明かな?」
「そうですね~。お願いしますマーリンさん」
BBに言われ、了承するマーリン。
「まず、メドゥーサについてだね。皆も知っての通り、エウリュアレとステンノの妹だ。今回は邪眼を封印しているから、強制的な拘束で捕まる事は無い事になってるよ。それと、エウリュアレが参加しているという事で、BBによってエウリュアレ、オオガミ、メルトリリスの三人には、メドゥーサを認識できないようにしてあるよ。エウリュアレが認識したら確実に弄って来るからね。鬼が精神ダメージを負って動けなくなるとか、もうギャグでしかないしね」
「マジでパシリにされてるからのぅ……いや、主にちっこいメドゥーサの方ではあるが……たまに儂が手伝うレベルで酷いんじゃが。つか、よく捕まえられたと思う。どうやったんじゃよBB」
「えっ。それはちょっと言えないと言いますか……DVD特典とか、オマケ短編とか、そういうので明かされる裏話的な奴ですよ。なので秘密ですっ」
「う~ん、それを言われると、今までの解説にもそう言う裏話的所が多々あったと思うんだけど。まぁ今更言っても遅いような気もするけどね」
目を逸らすBBに、マーリンは困ったように笑う。
「じゃ、次は李書文だね。言わずと知れた二の打ち要らず。一撃必殺の拳の使い手。まぁ、うちにいるのはアサシンではなく、神槍の使い手だけどね。当然、彼に捕まる時にうっかり殺されちゃうかもしれないけど、死なないように気を付けた方が良いね。喰らったら、たぶんメディア辺りが助けてくれると思うよ。医療班が真っ先に飛んでくると思うけどね」
「うっかり拳が出ないように言ってはいるんですけど、たぶん忘れて殴ってくると思うのでお気をつけて! 槍は没収してますけど、一応槍にも気を付けてくださいね!」
「怖すぎるんじゃが。檻行きじゃなくて座に強制送還とか、ホラーじゃろ。ドストレートに消し飛ばしに行ってるんじゃが」
「まぁ、死んでも直接送り込むシステムを組み込んでるので、安心してお亡くなりになってください!」
「このゲーム、明らかにプレイヤーを殺しにかかってるんじゃが」
明らかに危険すぎるゲームだという事に今更気づいたノッブは、頬を引きつらせながら笑う。
「と言ったところで、どうやら、先輩たちと、鬼が――――出会っちまったぁー!!」
* * *
「うおあぁぁぁ!? 中々ふざけてんなこのやろぉーーーー!!!」
「大丈夫! まだ一人目! スキルカードでどうにか――――」
「……まぁ、デカブツ一人くらいなら何とかなるでしょ」
「使う気ないのね分かったわ!!」
「■■■■■■■―――――!!!!」
風を砕きながら進んでくるヘラクレスから全力で逃げるオオガミ達。
余裕そうなメルトの隣を必死で並走するオオガミ。
メルトとは違い、エウリュアレを抱えているというハンデを負っているにもかかわらず、それでも何とかメルトに追いついているオオガミは、やはり人間を辞めているとしか思えない。
「んで、どうやって逃げ切るの!?」
「確か建物には破壊されないように防護壁が張られてるって言ってたから、路地裏を走り抜けるのが一番かな! よって、そこの路地を走り抜け!」
「私を落とさないでね~」
「気楽なモノねエウリュアレは!!」
まるで私は無関係だと言わんがばかりの反応に、悪態を吐きながらも逃げるメルトとオオガミ。
何とかして細い路地裏に逃げ込んだ三人。その後ろで同じく入ろうと頑張っているヘラクレスは、しかし壊れない店によって阻まれていた。
「と、とりあえず一安心かな……いや、反対側から来られたら不味いから、今のうちに逃げ出すのが一番かな」
「そうね……というか、いつまで乗ってるのよエウリュアレ」
「はぁ……しょうがないわね。自分で歩くわよ」
そう言って、大人しく降りるエウリュアレ。
そうして三人が反対側から出た時だった。
「ふむ。これで良いのか?」
「あっ」
「えっ」
「……嘘でしょ」
路地裏から出た瞬間、肩に手を置かれて硬直するエウリュアレと、それを見て即座にエウリュアレ――――正確には、その後ろにいる男から距離を取る二人。
そこにいたのは李書文。肩に手を置かれているエウリュアレは既に確保判定が出たらしく、スピーカーからBBの声が響く。
「っ、メルト!」
「逃げるわよ!」
オオガミは持っている二枚のスキルカードを素早く取り出すと、一枚をメルトに投げつけ、カルデア戦闘服に切り替えて李書文に指先を向けると、
「ガンド!!」
「チィッ!」
咄嗟に避けようとした李書文は、しかしギリギリ当たり拘束される。
そのうちにオオガミとメルトは走って逃げだす。
「なんで私に投げたの! もう一発使うでしょ!?」
「だって先生相手なら外す可能性があったし! 最悪の展開だけはダメだってば! つか、真っ先にエウリュアレ潰されたんだけど……!! エウリュアレも二枚持ってなかったっけ……!?」
「私が一枚、貴方が二枚、んでもって、エウリュアレが二枚で5枚だったでしょ! エウリュアレが捕まったのと、さっきガンドで使ったので残り二枚! 補充しなきゃ次は無理!」
「普通に見つかったらジ・エンドって、やっぱえぐいね……! 純粋な速度で逃げ切れるの、メルトくらいじゃない!?」
「会話しながら逃げれる時点で貴方も余裕でしょ!」
言いながら、後ろをちらりと見るオオガミ。
そこにはやはりと言うべきか、こちらに向かってくる李書文の姿があった。
「無理無理無理!! というか、速いって! 無理だって! どうやって逃げ切れと!?」
「あぁぁ、もう! もう一回ガンド! そしたら私が運ぶわ!」
「オッケー任せて!」
メルトからカードを貰い、再度李書文にガンドを打ち込むオオガミ。
しかし、
「うえぇぇぇぇえええ!? 躱されたんですけど!!」
「チッ! やっぱりさっきのは近かったから当たっただけなのね! ふざけてるじゃない……!!」
言いながら、メルトはオオガミの事を足払いして宙に浮かせると、そのまま地面との間に割り込んで無理矢理背負うと、全力で走り出す。
「やるならやるって言ってよね!?」
「余裕があったらそうするわよ!!」
そう言いながら、二人はワイキキストリートを駆けるのだった。
* * *
「おぉっと意外や意外! 最初に確保されたのは、エウリュアレだぁー!! 大番狂わせ! なんだかんだ言って最後まで残るんだろうと思われてたエウリュアレが最初に落ちたぁー!!」
「ま、マジか! 儂、マスターがおるから余裕だと思ってたんじゃが!! 嘘じゃろ!?」
「う~ん、これはマスター達大ピンチと言うところだね。スキルカードが二枚失われたのも手痛い所だけど、エウリュアレによる魅了も失われて、男性へのアドバンテージが無くなったという事は、あの二人はガンドかメルトの速力だけでゴリ押すしかないね。いやぁ、面白くなってきたよ」
そう言ったところで、ライブ映像用のディスプレイがもう一つ用意され、そこには牢屋の映像が流れる。
「さてさて。一応牢屋用の映像も用意しておりますが、メインはこちらの逃走映像。いじけてるプレイヤーを見るのも良いですけど、ちゃんと逃走者も見てあげてくださいね?」
そう言って、BBは楽しそうに笑顔を浮かべる。
「いやぁ、それにしても、あの狩り方は見事だったね。直前までのを見ていても、彼自身事前に待ち構えていたわけではなく、偶然マスター達が出てきただけなわけだけど、咄嗟に捕まえるという発想に至るのはやはり歴戦の勇士であることを如実に表しているね。うん。とてもいい。逃げ切れるだけじゃないというのがはっきりと示されているね」
「うむ。本気でビビったが、流石李書文よな。しっかりと対応しておった。見事なもんじゃ」
うんうん。と頷くマーリンとノッブ。
BBはそれを見つつ、
「ではでは、初の捕獲者が出たりしたこのタイミングで! 第一回のミッション! ド定番な奴を行っちゃいましょーう!!」
そう言って、BBは全域に放送をかけるのだった。
李書文先生は私の中でやばい人。たぶん分かりしころなんだから体力お化けだよなぁ。と思いつつ。
しかし、ここ数日だけで1万文字余裕で越えたんですけど……びっくりじゃぁ……