今日のカルデア   作:大神 龍

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皆さん、引きが強くないですか?(そして幕は閉じる)

 最後のBBスロット。それはゴゴンッ……と重い音を立てて止まるスロット。

 それは天の鎖の絵。エルキドゥを連想するそれは、

 

「またまたグッドラーック! 中々引きがいいですね! こちらは皆さんお馴染み! 私にとっても因縁深い天の鎖が鬼を襲います! 要するに、鬼を一定時間拘束と言うことで! 今のうちにアーマーを頑張って探してくださ~い!」

 

 そうBBが言うと同時、鎖の音がワイキキストリートに響くのだった。

 

 

 * * *

 

 

「クハハハハ! これはもう吾らの勝ちと決まったようなものよ! この装備にあのスロットと来れば、完全無敵! 怖いものなしと言ったところか!」

「なんで貴女はそうやってすぐフラグを立てようとするんですか!! バカなんじゃないですか!? 一緒にいる私も私ですけど!」

「アンタ達うるさいわ。黙って持っていけないのかしら」

 

 メルトに言われ、不思議そうに首をかしげるカーマ。

 

「そもそも、貴女は何をしてるんですか? 私たちがここに来たときからずっといましたし」

「別に良いでしょ。途中で別れたヤツ待ちよ」

「あ~……うむ。カーマ。これは関わらん方がいい。吾知ってる。これ以上関わると良いこと無い。腹に膝は死ぬ……」

「いやに具体的ですね……受けたんですか?」

「……吾を巻き込まんのなら受けても良いが、このゲームには復活できぬぞ……」

「あ~……まぁ、大奥でひたすら蹴られましたし、もう蹴られたくないので遠慮しておきます。どうせマスターの事でしょうし。それじゃ、頑張って逃げ回ってくださいね」

「一言余計。ほら、さっさと行きなさい」

 

 そう言って二人を追い出すメルト。

 そうして誰もいなくなった通りで、メルトは未だに来ないマスターに怒りを覚えつつ、仕方なく最後の一着を手に取る。

 

 

 * * *

 

 

「さてさて、ついにアーマーは完売。こういう時だけ運がないことに定評のあるセンパイは今も何処かをさ迷っているみたいですし。ともかく、天の鎖による拘束時間も終了。鬼の再稼働と同時にお知らせを!」

 

 意気揚々と話すBBに、嫌な予感を感じるノッブとマーリン。

 

「過半数が生き残るという、BBちゃん的にちょっと面白くない状況なので、きっと皆さんなら乗り越えられると信じて! 第三ミッションの代用として! 特製BBスロット! 使っちゃいま~す!」

「お前それどうなってようが使う気じゃったろ! ニッコニコで用意しておったもんなぁ!!」

「僕としてはそれだけは使わない方がいいんじゃないかと思うんだけどどうかな! 今からでも止めない?」

「え~……今からミッション用意するのも面倒ですし、スロットスタート!」

「「問答無用!」」

 

 容赦なく回される特製BBスロット。

 一体なのが特製なのか。それは言わずと知れた事。もちろん中身が凶悪だと言うことだろう。何よりもノッブの顔が雄弁に語っている。

 だがしかし。そんな思いはBBスロットに伝わるわけもなく、無情にもスロットは停止する。

 それは、緑の髪を持った、白いローブを来ている性別不明の人物。彼もしくは彼女の姿が描かれていた。

 

「というわけでぇ~! デンジャラスターイム! 最終兵器! エルキドゥさん発進! ちゃんと逃げ切れるように仕込んだんですから、ちゃんと逃げ切ってくださいね!!」

「無茶振りが過ぎないか!?」

「でも速度だけならメルトリリスが有利なのは変わらないね。うん。そういうところも勝ち目があると言うことなんだろう。大丈夫。きっと勝てるさ」

 

 そう言っている間に、エルキドゥがワイキキストリートに降り立つのだった。

 

 

 * * *

 

 

「無理無理無理無理!! 性能とか問題じゃないです! 根本的にダメです! 逃げ切れる気が全くしないです!」

「う~む。吾もあれは素直に諦めるのがいい気がする……まぁ鬼として最後まで足掻くが。去らばだ!」

 

 真っ先にバラキーとカーマを見つけたエルキドゥは、やはり容赦なく追ってくる。

 とはいえ、これまでの鬼と同じくらいの速度の為、速度的にダメと言うより、相性的に苦手というのが現状正しいだろう。

 

「仕切りなお――――」

「それはもう見切ったワン!」

「なっ!」

 

 逃げ出す寸前。路地裏から飛び出てきたキャットに狩られるバラキー。

 しかし、事前に着ていたアーマーが反応し、キャットを拘束する。

 

「吾が一枚上手だったな! 去らばだ! 仕切り直し!」

 

 そう言っていつものごとく飛び去るバラキー。

 それを確認したエルキドゥは、すぐに別の標的を探しにいく。

 

 

 * * *

 

 

「うんまぁ俺が一番狙いやすいよね分かるとも!!」

 

 路地裏を減速することなく器用に曲がっていくオオガミ。

 だが、サーヴァント相手にいつまでも逃げていられるほど体力があるわけでも、速力があるわけでもない。

 しかもスキルカードも心許ないオオガミは、自力でエルキドゥの追跡を逃れるしかないのだった。

 

「まぁ、スキルカードの補充をする余裕がなかったのが原因ではあるけど、ある意味自爆な点があるから仕方無いけど、それにしても運がないなぁ本当に! エウリュアレが捕まったのが運の尽きですかねっ!」

 

 そう言いながら室外機を乗り越えたオオガミ。

 その後を追うようにエルキドゥが室外機を飛び越えたその瞬間、素早く反転したオオガミは指先をエルキドゥに向け、

 

「ガンド!」

 

 空中で、それも物を飛び越そうと意識を逸らした一瞬の隙に叩き込まれた一撃。

 その弾丸の速度ゆえに回避が出来なかったエルキドゥは直撃し、その場に崩れ落ちる。

 それをやはり最後まで確認することなく逃げ去ったオオガミは、なんだかんだ言って逃げることに関しては優秀だった。

 ただ、一つ誤算があったとすれば、

 

「あ~、うん。無理。ごめんねメルト。これは運がなかった」

 

 偶然か計略か。路地裏から出た先に何故かいたヘラクレスに捕まるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「……エルキドゥだけ、ちゃんと考えて動いてる……?プログラム通り動くんじゃなく、他の鬼役がどう動いているかを考えながら追い詰めてる……まぁそれでも勝てなくはないでしょうけど、殺意が高すぎないかしら」

「冷静に分析してる場合ですか! というか、なんでこっちに押し付けに来たんですか!」

「自分だけ速いことを良いことに吾らに擦り付けていく気か。スキルカードがもう少ないから使いたくないのだが……えぇいここで捕まるよりはマシか! 何度仕切り直せばいいのか分からぬな! 羅生門のトラウマがまた掘り起こされそうだ!」

「いいから早くジャンプ! さっき捕まりかけてましたし!」

 

 再びエルキドゥから逃げるバラキーとカーマ。

 その原因は隣で余裕の表情でエルキドゥの考察をしているメルト。

 

「吾らは先に逃げさせてもらう! 仕切り直し!」

「すぐに着地地点を予測してそこに向かうから覚悟しておいてね」

「なんですかこの人! 私たちが何しましたっけ!」

 

 カーマの発言を残したままその場から離脱する二人。

 そして、メルトは小さくため息を吐くと、

 

「それじゃ、最後まで逃げ切ってあげるわ」

 

 そう言って、エルキドゥを挑発するのだった。

 

 

 * * *

 

 

「残り時間ももう少し! 逃げ切りなるか! 土壇場で捕まるか! そろそろ幸運尽きたかバラキーチーム! 白鳥は優雅に飛ぶかメルトリリス! 『ワイキキストリート逃走中!』決着までぇ!」

 

 BBは大きく腕を振りかぶりながら、

 

「5!」

 

 ノッブも楽しそうに、

 

「4!」

 

 マーリンは興奮しながら、

 

「3!」

 

 観客席も盛り上がり、

 

『1!』

 

 幕を閉じる。

 

『0!』

 

「『ワイキキストリート逃走中!』逃げ切り勝利はぁーーー!!」

 

 

 * * *

 

 

「せ、セーフ……? アウトじゃないんです……? あ、あぁ……助かったぁ……」

 

 拘束されているヘラクレスと、カーマに触れる寸前の李書文。

 紙一重生きていたと言う状況に心の底から安堵する。

 そんなカーマに近付くメルトは、

 

「あら、バラキーはギリギリアウト? 残念ね。着地地点に運悪く鬼でもいた?」

「えぇ、全くその通りですよ。逃げた先にいるとか、もうギャグじゃないですか……無理ですって」

「残念ね。逃げ切れるものだと思ってたわ」

 

 そう言って、心底残念そうにため息を吐くメルト。

 そんな二人にライブカメラが近付き、

 

 

 * * *

 

 

「メルトリリス&カーマだぁーー!!」

 

 うおおぉぉぉーーーー!! と沸き立つ観客席。

 実況席のノッブも騒いでいるが、気にしない。

 

「最後の白熱の状況に、皆さん驚いたことでしょう。メルトはスキルカードを全部使っての逃走戦で、カーマはバラキーが先に狙われたことと、リアクティブアーマーが健在だったことによって運良く生き残った感じですね。最後まで安定して逃げ切ったのはメルト。終始ギリギリだったのがカーマですね。いやぁ、面白い大会でした!」

「うん。司会にまとめられてしまうと解説としてはやるせないけど、とても面白い戦いだったよ。特に最後。メルトリリスがエルキドゥのターゲットが二人に向かないように防戦をしていたのは見物だったね。中々見られない戦いだったよ。ありがとう!」

「実況的にも司会の自由奔放さに言葉を失ったが、主催者側としてはかなり良いものに出来たのではないかとちょっと思っておる。何より、エルキドゥが出てなお捕まらないのは、驚いたものじゃ。うむ。良き試合であった。お疲れさまじゃ!」

 

 ノッブが締め括ると、BBは最後に会場に二人を強制召喚すると、

 

「ではでは、勝者となった二人には、特別賞です! 100万QPとか貰っても嬉しくないでしょうから、こちら! センパイのお菓子を優先して貰える引換券です! ちなみにこちら、センパイが発行しているので、効果は確実です。なんせ本人発行ですし。ではでは、皆さん! また次回がありましたらお会いいたしましょう!」

 

 BBはそう言って手を大きく振り、戦いの幕は閉じられるのだった。




 ようやく完結。ルルハワ終わったんですが(吐血
 どうでした? 楽しんでもらえたなら幸いです。



 個人的には100点中70点くらい。もうちょっとミッション盛り込みたかったなぁと思いつつ、自分の技量と続かないやる気を恨む私です。
 エウリュアレデートはラスベガスに任せた! 頑張れ次の私!

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